*ﾟスミレの花をあなたへ F9

３３輪＊歳下でも ページ33

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side:you




「卓さん、守備が得意なんですか？」
『え？ あー……まぁ、どっちかっていうと、守備のが良いかな』
「やっぱり！」



卓さんからの着信が嬉しくて、

今日の試合見てて思ったんです！
卓さんの守備って綺麗だなーって。

と。我に返れば、なんというかまぁ……
恥ずかしい事を口走ってた。



『……凄い見てくれとるやん、』
「……ぁ、ごめんなさ、」
『何で謝ると』



確かに、何で謝るとか、そんなの、
わかんないけど。だけどやっぱり、
恥ずかしいから……ごめんなさいと、また謝る。


そしたら卓さんは、ふ、と優しく溜息を吐いた。



『今度、またドーム見に来なよ』
「え、」
『チケット、こっちで手配するから』
「や、」



そんなの申し訳ないです、と言ったら卓さんは、
……嫌なら良いけど、なんて、なんて。

そんな言い方はずるいです。
……だって、嫌なわけない、じゃないですか。



「チケットは、大丈夫です。……でも、今度見に行きます」
『遠慮すんなって言っとるんに』
「甘えてはいられませんから」



ちゃんとバイトもしてるんですよ、と自慢げに
言うと、卓さんは意外そうに、え？ って。



『雛子ちゃん、社会人じゃないの』
「え……や、違いますよ」
『…………まじか、』



……えっと、この反応は、もしかして。
卓さんずっと、私の事社会人だと思ってた……？

あと1年で、社会人にはなるけれど、
今はまだ大学生。



『ずっと社会人やと思っとった』
「ほんとですか？！ ……そんなに老けてるかな」
『そういう事じゃなくて！』



冗談半分で言った言葉は、
卓さんには本気に聞こえたみたいで、
狼狽える様子がわかるのが面白い。

……ポーカーフェイスとか、私の前では
何処かへ消えてるんじゃないだろうか。


っていうか。問題は。



「ごめんなさい、……まだ子供で」



卓さんは……大人だし、
まだ大学生なんていう子供な私じゃ……
卓さんの眼中には、なんて。

都合のいい時はポジティブで、
……こんな時には、ネガティブで。

私の思考はもう完全に、
……卓さんにばっか、振り回されてて。



『……いや、別に俺はそんなん気にせんけど』



ただ、ちょっとびっくりしただけで。と。

そう言う卓さんに、
今度はまた、期待の方が膨らんで。




(ほらだから、今度は都合よく考えてしまう)





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