*ﾟスミレの花をあなたへ F9

２２輪＊中島タオル ページ22

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side:you




「Aちゃん、なん？ それ」
「へ？ あ……や、これはっ、」



やばい……見られちゃった。
は、恥ずかしすぎる……っ。



「……こ、これは……西崎ちゃんの押しに負けて買ってしまっ、」
「ふぅん……じゃあ、Aちゃんが欲しくて買った訳じゃないんや？」



うっ……。
そう言われれば、答えにくいけど。
っていうか、その聞き方はズルイでしょっ。

欲しくないものなら、どれだけ押されても
……買わない、し。



「欲しくなかった……って言えば、嘘になります、けど」
「ふぅん？」



卓さんっ……なんでそんな、ニヤニヤっ？！
……やだ、もうっ恥ずかしすぎて死にそうっ。


だってこんな……確かに昨日で私は
完全に中島卓也ファンになってしまったけれど、
……それを本人に見られるのは、
流石に恥ずかしいって！



「ち、違うんですよっ……？ 卓さん、」
「何が違うん？」
「そ、それは……」



これは……弁解しようとすればする程、
悪い方に転がるパターンのやつだ。

そう、分かってしまえば覚悟は決まる。
ええい、もう！ どうにでもなれっ！



「……卓さんのファンになりましたんで」
「！」
「昨日のプレー、すっごくかっこよかった……デス」



付け足した「デス」が不格好になったあたり、
ぎこちなくてダサいけど……ここまで
開き直れば、卓さんももう何も言ってこないよね？



「ふぅん……そう、……へぇ〜」
「な、何ですかっ」



何だろう、この人といると、本当に
調子が狂う……っ。これでも私、クールな
タイプだって言われるのにっ(西崎ちゃん談)。



「いや？ 嬉しいなーって」
「……き、気持ち悪くないんですか？」
「なんで？」
「や、だってこんな……タオルとか」



ぎゅっと右手に持ったタオルを握り締めると、
卓さんはクスッと笑って私からタオルを
取り上げた。



「俺のタオル持っとって気持ち悪いって思うような相手とは、一緒に飯食いに行かんし、カラオケなんてもっと行かんし、」



──……一緒に寝るとか有り得んやろ。



卓さんって、ずるいなって、
改めて思った瞬間だった。

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