【文豪ストレイドッグス】元.ポートマフィアの指導者 part 7

佰漆拾伍頁─終結─ ページ42

その瞬間、空が震えた。

轟音が鳴り響き、空気をも揺らす。

白鯨の胴体に頭からぶつかった無人機はあまりの衝撃に耐えられずに接着面から潰れ、やがて炎を吹き出した。

一方の白鯨はそれによって軌道が変わり、斜め進んで行きヨコハマの街へ差し掛かる前に海へと墜落する。


敦と芥川、メルヴィルはパラシュートを使って無事に海へと着水する。

敦は直ぐに顔を上げ、遠くで落ちていく白鯨と無人機の存在を見つめていた。


海面に打ちつけられることによって生じた鋭く重い音。

それが敦の耳にも届き、呆然としていた頭を一気に現実へと連れ戻した。


悲痛な叫びが、遮るもののない広大な海に広がって消えた。


白鯨の墜落地点に何かが見えた気がしたがそんな事など気にもならない。


無人機が白鯨とぶつかり海に落ちたという事実だけが彼の脳を支配する。

救えなかった少女の名前を呼ぶそれは、獣の咆哮にも似ていた。


メルヴィルに担がれ敦は近くの港へと上がる。

けほっ、けほっと芥川が苦しげに咳き込んだ。




｢そんな......如何して彼女が...如何して...｣

｢鏡花...愚か者め。光に生きる希望さえ抱かなければ...無駄に散らずに｣




芥川のその言葉に敦は溢れ出てきそうになった反論を歯をきつく食いしばって止めた。

ここで云い返したところで彼女が戻ってくるわけではない。

悔しさに顔を染め、敦はただ下を向いて溢れ出てくるもう一つのものを必死に堪えた。




｢これで善かったのだよ、敦君｣




突然割り込まれた諭すような声に敦はハッとしてその発生源に顔を向ける。

そこには彼の先輩である太宰の姿があった。

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