【文豪ストレイドッグス】元.ポートマフィアの指導者 part 7

佰陸拾弐頁─空虚 2─ ページ28

今思い返せばこの二十年の時はあまりに短かったように感じる。

それは勿論、記憶が抜け落ちてるっていう理由もあるだろうけど。


でもそれを無しにして考えても、自分の人生はとても早かったと思う。

決して許されないようなこともしてしまった自分が云っても善いのか判らないが、割と充実した楽しい人生だった。

紙にはこれまで関わった覚えている限りの全ての人へのメッセージも書いた。

原稿用紙を何枚使ったかなんて正直覚えていない。

それでも多く見積もって用意していた分が足らなくなったのは確かだった。

手紙もそうだが書き始めると書く前には思っていなかったようなことまで次々と筆を走らせてしまう。

所々、文字が滲んでしまっている箇所もあるかもしれないのが後悔だ。




『あーぁ...この街の景色も、これで見納めになるかもしれないのか......』




ゆっくりと空に目を移す。

敦君と芥川君ではフィッツジェラルドさんを倒せないと考えているわけではない。

しかしそれには彼等の信頼関係が必要なように思えてしかたがない。

そして、今の現状の彼等にそれは────




『いや。結局は誰かがやらないと駄目なんだ。今頃怖気付くだなんて、私らしくないぞ』




ぺちんと両手で挟むように頬を叩き、弱くなりかけた気持ちに喝を入れる。


そうだ。

今頃何を思ってるんだ、自分は。

もう数年前も前から決めていたことじゃないか。




『すぅ......ふぅ......よし、行こう』




深く長い深呼吸の後(のち)、私は重い足を持ち上げ歩き出す。

向かう先は此処よりも更にヨコハマの海がよく見える場所だ。




『お父さんもお母さんも、この街の為に命を使うなら怒らずに迎えてくれるよね』

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