Story 9. ページ10
しかし、そこで落ち込んで俯いてしまったAには聞こえた。まだこの部屋からは出ずに、部屋に設置されている本棚からとある一冊を取り出して、そのページを捲りつつ、彼女の声に応える凪斗の言葉が。
「──“アーラ”というのは、遥か以前に作られたと言われる飛行型の機械だ」
「…………飛行型の、機械」
「誰もその在り処を知らない。だからお前が何も知らないというのも当然の事だ」
彼は、見た事も無く、どこにあるのかも、どのような形をしているのかもわからない“アーラ”を探したいと言うAに呆れた訳では無かった。
寧ろ、アーラと呼ばれる物を知らないと言うしかないのは当然の事。もしも知っているという者が居るのなら、凪斗ですら、寧ろこちらが正体を聞き出したいと思うくらいの代物であった。
「どこにあるのかも、形もわからない。俺が知っているのもそのくらいだ。どこに行けばそれを知る人物に出会えるのか、それ以前に実在する物なのか──」
…………誰にも、何もわからない。仮にそれが実在するのなら、何故人々にはアーラを見つけられないのか。何故、それは実在すると語られだしたのか。全てが謎なのだ。
「──面白い。その話、受けよう」
「えっ!」
「マジかよ……!」
そうして、暫し考え込んでいた凪斗の顔が上がった。彼が承諾したことには、大いに喜んで笑みを輝かせるAと、疾うに諦めを付け、却ってこちらから拒否したい気持ちで居た颯太の苦々しい反応が返った。
凪斗の承諾がもう少し早ければ、颯太も純粋に喜んで安心していた筈だったのだが。
「まずは準備を整えなければならない。そちらもここまでの道のりで疲れただろう。この近くに丁度良い宿がある。俺の紹介だと言えば幾らか差っ引いてくれる筈だ」
「わかりました。御親切にありがとうございます、凪斗様」
「…………」
「……(何で今ちょっと嬉しそうな顔したんだよ)」
出発は明日の朝にして、今日のところはこの街で休んで行けという凪斗に、素直に従って頷くA。どうやら凪斗は彼女の様付けの呼び方を妙に耳触り良く感じたらしく。無言ではあったが、一瞬、隠し切れていなかった表情を鋭く読み取る颯太。
──本当に、これからコイツと旅を共にするというのか? 嫌悪感を隠せる気がしない颯太だが、とにかく今日は休むという事には賛成して。
「(……まあ、ここは三人や四人と一緒に寝泊まり出来るほどでは無さそうだしな)」
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フェイル(プロフ) - さにー☆彡さん» 初めまして! コメントありがとうございます! 細々と連載していくつもりでしたのでコメントをいただけるとは思わず、本当に嬉しいです! まだまだ勉強中ですので恐れ多い褒め言葉です;; 今後も頑張らせていただきます、よろしくお願いいたします! (2018年12月9日 21時) (
レス) id: de67700d03 (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - 初めまして、突然のコメント失礼致します。とても綺麗な文章に感銘を受けました……！ これからも陰ながら応援しています。更新頑張って下さい！ (2018年12月8日 9時) (レス) id: 632d3b069c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：フェイル | 作成日時：2018年12月1日 22時
