Story 18. ページ19
「別に、資料があるだけ乱雑に詰め込まれている訳じゃないんだ。ある程度はジャンル分けをして収められているだろうから、その辺りは管理者に聞けば良い」
どちらかと言えば読書を好む傾向にあるAも、つい音を上げたくなるような量の資料が収められている事は、もちろん凪斗も把握している。
そういう時こそ、そこにいる管理者をこき使ってやるのだと笑う彼には、Aと颯太が何とも言えない苦笑いを零して、曖昧な頷きを返した。
──その時一つの声が、守護棟へと向かおうとした三人を呼び止める。
「あらあら、もしかしてそちらにいらっしゃるのは凪斗さんではありませんか?」
「「…………?」」
彼らを呼び止めたのは、優し気な老婆の声だった。振り返ってみると、やはりこちらを見つめて穏やかな笑みを浮かべているのは、片腕に買い物かごを抱えた一人の老婆。
Aと颯太は凪斗へと視線を移したが、凪斗自身もあまりその女性の姿に見覚えが無く、とりあえず問いを投げて返してやる事にした。
「俺に何か御用でも?」
「いえいえ。ただ、以前にお世話になった事があるものだから、思わずこうして声を掛けてしまって──」
そう言いながら、やはり穏やかに笑う老婆の話によると――いつの話だったか、この女性の孫の男の子が行方知れずになってしまった時、唯一の頼りになった凪斗が無事、男の子を救出してくれた事があったのだという。
だがそれは今から数年も前の話で、他にも幾つもの依頼を受けて来ている凪斗が覚えて居ないのも無理はなかった。
「今はそちらの御二方の依頼を受けていらっしゃるのね」
「ああ、まあ。今回はちょっと厄介な依頼になったので、次の依頼を受けられるのは当分先の事になりそうですが」
話をしながらちらりと凪斗の視線を受けたAは、苦笑いをして返すしかない。幾ら探偵としての仕事とはいえ、今回の依頼で彼にそれなりの負担を掛けてしまっている事は自覚しているのだ。
「あら、そう……という事は、今は第二都市の心強い探偵様がどちらもいらっしゃらない事になるのねえ」
「…………どっちも──って、もしかして、もう一人は“探偵.S”と呼ばれている方の事ですか?」
「そういえば、そんな風に呼ばれているわねえ。あの子に付けてあげるには、少し仰々しい気もするけれど」
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フェイル(プロフ) - さにー☆彡さん» 初めまして! コメントありがとうございます! 細々と連載していくつもりでしたのでコメントをいただけるとは思わず、本当に嬉しいです! まだまだ勉強中ですので恐れ多い褒め言葉です;; 今後も頑張らせていただきます、よろしくお願いいたします! (2018年12月9日 21時) (
レス) id: de67700d03 (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - 初めまして、突然のコメント失礼致します。とても綺麗な文章に感銘を受けました……！ これからも陰ながら応援しています。更新頑張って下さい！ (2018年12月8日 9時) (レス) id: 632d3b069c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：フェイル | 作成日時：2018年12月1日 22時
