【０】遠望の風音 [ｶﾉﾝ] ＊Prequel＊

＊ ページ23

「近頃の北方は気候が激しいと聞くし、まずは此方へ行く方が手堅いと思うんだが」

「けど、どうやって西の街へ向かうんだ? 歩いてなんて言わないでくれよ。
俺はクリスタルは作れるしそれを使えるけど、魔物との戦いは慣れてないしさ……」



東西南北の街々に囲まれるようにして存在している大都市は
土地の中央というよりかは、やや北東に位置している。

故に、北の街と東の街との距離は近めで、この二間では旅客船が通っているのだ。
先程から翔が話すように、向かうなら明らかに西より北の方が容易で確実と言えた。



「もちろんだ。俺も出来る事なら街の外を単身で歩くのは避けたい」



俊也も戦いこそすれ、街の外に居る不特定多数の魔物を相手にし切れる自信はない。

ただ気候的には断然に西の街の方が、この大都市に近くあると聞く。
肩慣らしに行くならまずは此方からの方が、結果として問題は少なく済みそうだ。



「だから移動手段も兼ねて、もう一人、他の者の力を借りに行かないか」

「もう一人……誰の許に? もしかして、俊也の知り合いが他に居るのか?」


「いや、同年代の知り合いは翔達以外には居ない。……隣の都市へ向かうんだ」

「──隣の都市! って事は、つまり……」



聞いて、翔は俊也が言わんとしている事をすぐさま察知した。

大都市に寄り添うように存在し、大都市に負けず劣らず繁栄し多くの人々が集う街。
しかし、大都市とはまた一風変わった空気や生活スタイルを持つという場所。

目を見開いた翔に、俊也はしっかりと頷き返してその答えを口にする。



「この大都市のすぐ傍にある第二都市、そこに多く点在するという探偵の許に」



人々の話では、特に優れた探偵はもちろんそれなりの収入がある訳で
高額に売買されている空飛ぶ移動用機械、グライダーを所持しているという。

これから二人が探しに行くアーラも飛行型の機械だと言われているが、
グライダーがその形を模しているのかどうかは定かでない。

だが個人の移動手段としては、場合によっては旅客船よりも上等なのである。



「そっか……目処が立ってるって言ったって、その後どう行動するかは
まだわからないもんな。探偵に依頼として出すのも良いかもしれない」

「行ってみるか?」

「ああ! ……でも、そこに居るっていう探偵って一人や二人の話じゃないんだろ?
誰に頼めば良いんだか……アーラの話なんてまともに聞く奴が居るかな?」

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