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男の無言の行為はAを我に返らせて、言い放った彼女は
自身も己の行為が信じられないといった様子で、虚を突かれたように目を見開く。
それからふと申し訳なさそうに俯くと、今度は普段より小さな声で言った。
「ご……御免なさい、口が過ぎました……」
「いや、君の言う通りだ。正直、北の気候を侮っていた……君達には迷惑を掛けた」
「お気になさらず。街には、貴方以外にも同様の方がたまにいらっしゃいますから」
北の街周辺で、遭難等で人が倒れているのを目撃する事は
しょっちゅうという訳でもないが、稀有な事態でもない。
颯太はそうフォローするが、彼も内心では男に対する驚愕の思いでいっぱいだった。
「(とは言え、まさか大都市からここまで単身で来たっていうのは──……)」
そもそも、折角大都市方面からやって来るのなら、其方から通って来る
地上を走る旅客船に乗る方が遥かに安全で快適なのだ。
ただ旅客船もあまりの悪天候には耐え切れないので、
猛吹雪の時には北の地に差し掛かってから歩きで街まで来る者も居るが――。
大都市から歩き通しとは、街の外なら魔物との遭遇もほぼ間違いなくあっただろうに。
これではAが珍しく怒りたくなるのも無理は無いだろう。
「しかし、迷惑を掛けてしまったのには違いない。しっかりと準備を整えて居れば
避けられた事態だ……だから、謝罪と礼を兼ねて、これを受け取っていただきたい」
「え…………?」
極寒の中で意識を失うのは、男にとっても大きな反省点となったか。
流石に消極的になって二人に礼を重ねるが、唐突に謝礼を差し出されて
却ってこちらが動揺させられ、男が手にし出した二つの物に視線を落とすA。
一つはアクセサリーと、もう一つは大きな──少し古ぼけた紙を丸めた物だった。
男は何も言わずにそれを差し出して来るので、とりあえず渋々と受け取る。
「これは一体……何の資料でしょうか? ペンダントまで……」
「何れにせよ、其方が関心を持たなければただの紙切れに過ぎない物だ。
ペンダントの方は、資料の答えに辿り着く為の手掛かりになる筈」
試しに広げてみると、何かの資料のようだというのはAにもわかったが
それが機械の物らしいという事の他には全く理解が及ばず。
更に、ペンダントがこの資料に繋がる手掛かりだと言われて一層、疑問を抱いた。
「──嘗ての希望の夢に、興味はないか?」
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フェイル(プロフ) - ゆーふぉー(DS)さん» 彼が生まれた家庭は決して悪くはなかった筈ですが、結果的には父の諦観や母の夫への執着が崩壊を招きましたね……。Fshは舞台やキャラ設定を一から作っているオリジナル作品なので、そう言っていただけるとは思わず天にも昇るほど嬉しいです! 本当に有難うございます;; (2017年7月19日 1時) (レス) id: de67700d03 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーふぉー(DS) - フェイルさん» 凪斗様キター!家庭環境、世間様が大好きな精神的虐待のネタになりそう…フェイルさんの文章がすごくさらさらと読めて、楽に読み進められるので偶に他シリーズやFshなども読み返させていただいてまして…そのなかでもFshの世界観がすごくすきです!((突然の告白 (2017年7月17日 0時) (レス) id: efac798cd6 (このIDを非表示/違反報告)
フェイル(プロフ) - ゆーふぉー(DS)さん» 許嫁の件は、あの物語自体すぐに終わってしまったのであまり脈絡のない話だったかなあと今更ながら首を捻っています;; でもあれで本作の夢主が誰のもとに向かうのかという指標にはなったかもしれません。どのキャラでも、創作キャラに関心をもってくださり嬉しいです! (2017年6月10日 15時) (レス) id: de67700d03 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーふぉー(DS) - 自分でもよく分かって無いのですが、少なくとも“Fsh”が終わるころには凪斗様信者()でしたね!((キリッ 許婚云々の話が出てきたり目が光に弱い事を明かすシーンがあったりした最後の方は発狂してました((追懐 (2017年6月2日 0時) (レス) id: efac798cd6 (このIDを非表示/違反報告)
フェイル(プロフ) - ゆーふぉー(DS)さん» お久しぶりです、コメント有難うございます! 凪斗押しだったとは……! 本当はポンと本編を出したかったのですが、想定していたより長々としそうだったので埋め合わせで前日譚を作ってしまいました。オリジナル作品ですが楽しみにしてくださって本当に嬉しいです;;;; (2017年5月27日 20時) (レス) id: de67700d03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フェイル | 作成日時:2017年4月7日 20時