続き ページ5
藤「大丈夫ですか」
藤巻が部屋から出るなり言った。榎並は上の空だった思考を急いで戻す。
「ええ、大丈夫です」
少し慌てつつも榎並は言う。藤巻は笑顔を見せた。
藤「じゃあ行こうか」
「はい！」
—————————
病院を出た後、藤巻は白い息を吐きながら榎並に尋ねた。
藤「どこへ行きます？」
榎並は悩んだ。いつも酒があればどこでも良いので大体下町の酒臭い所で飲み歩いている。
「藤巻さんは？」
逆に質問してみた。藤巻も悩む。
藤「……どこ……でも……」
藤巻は気まずそうに言う。榎並は、ですよねーと言わんばかりに微笑んだ。
「じゃあここで良いですかね」
榎並はたまたま目に留まった居酒屋を指した。そこは焼き鳥と安価で酒が飲めることが売りのよくある居酒屋だ。
藤巻と榎並が並んで入って行く。中は残業終わりのサラリーマン達でごった返している。
「生ビールを」
開口一番お酒を頼んだ榎並に藤巻は驚きの視線を向ける。
藤「榎並さん、お酒飲まれるんですね」
「私、皆からどんなイメージになってるんですかw」
榎並は笑って答えた。藤巻は嬉しそうに微笑む。
藤「じゃあ僕も、生ビールを」
藤巻も頼んだ後、藤巻は改まった様に榎並に向き直った。
藤「今日はすいませんね、あんな勝手な事して」
「いえいえ、全然大丈夫ですよ。でも、なんで急に？」
藤「それは……」
藤巻が大人しくなった。
藤「その……抜き打ちでやった方が良いって本坊事務長が……」
藤巻はモゴモゴ言った。
しばらくして注文していた生ビールが机に置かれる。
気まずい空気がイヤになって藤巻は一気に生ビールを飲み込んだ。
「ちょっ、そんな一気に飲んだら……」
慌てる榎並に構わず藤巻は飲み続ける。ついにジョッキを空にしてしまった。
藤「だい……大丈夫れすよ」
早々に呂律が回っていない藤巻を心配つつも榎並は焼き鳥やご飯などお腹に溜まる物を頼んだ。
「藤巻さん、結構飲むタイプなんですね」
藤「んんぁ……」
曖昧な返事で藤巻は壁にもたれかかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 8人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Rei | 作成日時：2024年3月11日 7時
