続き ページ3
やっと行った。ため息を吐いて冷たくなったカフェオレを喉に流す。本坊さんとはデスクが離れているのであまり関わりは無い。逆に藤巻さんとは挨拶をするぐらいは仲が良くなってきた。周囲から変人だなんて言われているが普通に優しく、ただ好きになる要素しかないと思うが……私の偏見だろうか。
藤「あの」
ボーッとしていると不意に藤巻がドアを開けて声を掛けた。榎並は驚き、空のカップを落としてしまった。
「なっななな何ですか⁉︎どっどうしたんですか」
榎並の驚きように藤巻も驚き、そして少し申し訳無さそうに入ってきた。
藤「あの……さっきのこと、嫌じゃ無かったですか」
心配そうに藤巻は言った。さっきのことが心に引っかかっているようだ。
「あ……いえいえ全然！私は大丈夫ですよ！」
榎並は微笑み、コーヒーをどうぞと言わんばかりに差し出した。藤巻は受け取り、一口飲んで、にっこり笑った。
藤「ありがとうございます。美味しいです」
藤巻の笑顔を初めて見た榎並は頬を赤く染め、変な声が出そうな口を押さえた。
藤「？」
藤巻は首を傾げ、またコーヒーを飲んで一息吐いた。
「あぁ……すいません……えっと、他に何か？」
榎並が言うと藤巻は
藤「いや、別に」
藤巻はあっさり言い、コップを返された。
「えっ」
榎並は驚き、困惑の表情を見せた。藤巻は少し申し訳無さそうな表情を見せると
藤「ごめんなさい、本当はもっと話していたいんですけど……」
本「藤巻先生ー？何やってるんですか？久留米さんから榎並に乗り換えるんですか〜？」
本坊さんの声が聞こえる。都市伝説というか噂というか、同じ職場で藤巻さんと同じように変人と言われる久留米さんと付き合ってるんじゃないかと言われている。私はあまり信じていないが。だが最近藤巻さんのデスクに久留米さんが出入りしていることで真実味を帯びてきたことに不安を覚えている。
藤「そういう事なんで……では」
藤巻は少し手を振って去って行った。榎並も小さく手を振った。
また1人になって、榎並は緊張の糸がやっと切れた。
「藤巻さんの笑顔、初めて見たな……」
1人で少し頬を染めながら微笑んだ。藤巻の笑顔を思い出し、自然と笑みが溢れる。幸せな気持ちになりながら榎並は仕事に戻った。
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作者名：Rei | 作成日時：2024年3月11日 7時
