本編 ページ2
「はあ……」
髪をかき上げながら榎並Aはデスクに肘をついて俯いた。榎並は明鏡医科大学の事務員だが何故か病理医の所にデスクを置かれている。昔は不満だったが今では慣れたものだ。デスクは1人部屋(倉庫みたいな所だが)にあるのでサボっていても何も言われない。
コンコン
ドアのノックが鳴った。飲みかけのカフェオレを置き、ドアを開けた。
本「どうも」
事務長の本坊が立っていた。後ろに藤巻も立っている。
「な、何でしょう」
榎並は少したじろいだ。デスクや部屋がグチャグチャで人には見せられない。藤巻はその様子を見て申し訳無さそうな表情を見せた。
本「いやぁ最近仕事の進みが遅いので何かあったのかなと思いまして。ほら、ここ本部から離れてますし」
そう言い入ろうとする本坊を榎並は止めた。本坊は不満そうな顔を見せる。
本「何でですか」
「いや、あの……色々私物とか、その……色々あるんです！」
しどろもどろな榎並の様子を見た藤巻は強引に入ろうとする本坊を止めた。
藤「まあ榎並さんも色々あると思いますから、ね？」
本「でも……」
本坊は何かゴニョゴニョ言った。藤巻は慌てた様子で本坊の言葉を遮る。
榎並はその隙にデスクを軽く片づけ、本坊の前に戻った。
「えっと……もう大丈夫ですよ」
少し焦りながら藤巻を見る。本坊はホッとした表情を見せ、榎並の部屋に入っていった。藤巻も申し訳無さそうに入っていく。しばらくすると本坊達はデスクを見るというよりデスクを漁って何かを探している様だった。
「ちょっちょっ、なんでそんなとこまで調べてるんですか」
引き出しの中まで調べる本坊に榎並はたじろいだ。
本「別に良いでしょ。もしかして、何か隠してるんじゃ無いですか？」
榎並は首をぶんぶん横に振って否定した。何故こんな疑われているのか分からない。
「なんでそんなこと言うんですか、私は何もやってませんよ」
本坊は目を細めて疑いの視線を向けた。
藤「やっぱりある訳無いですよ。榎並さんは違いますよ」
藤巻は申し訳無さそうな顔で言った。
本「そうか……」
口を尖らせ本坊は去って行った。藤巻も「すみません」と榎並に小さく言うと本坊に付いて行った。
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作者名：Rei | 作成日時：2024年3月11日 7時
