一途な天才軍師くん (ページ10)

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罪悪感とさよならページ10

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クリスマスの音色が響き出す十二月半ば。
朝起きればケーキの特集が、コンビニに寄ればイメージキャラクターの男性アイドルが垂れ幕の様に天井からぶら下がっている。
この顔を持って生まれ愛でられ育てられれば、垂れ幕になる理由も分かる気がする。
すれ違う人は皆聖なる夜に心躍らせる。
年寄りでさえ私でさえも。

「クリスマス集まろう」
久しぶりに鳴った電子音。
機械的なリズムに合わせて私の鼓動も脈打ち出した。少し前まではいつも一緒だった差出人は中学校の同級生だ。何をするにも一緒のまるで一心同体だったのに気付けば段々と疎遠になっていった。
今頃になって急にどうしたのだろうか。
だが大方の予想はついてる。彼氏が出来ず一人ぼっちのクリスマスが嫌だったんだろう。こういう時だけ頼りにされるのは些か腹が立つものだ。

「ごめん、多分無理」
少しくらい私も彼女と同じ様な事をしても聖書に出てくる神様もキリストさんも目を瞑ってくれるだろうと、淡い期待を抱く。
向こうから聞こえてくる籠った声色と世渡り上手な彼女に痛い目をみせてやろう。

「それで今、罪悪感に苛まれておるのか？」
銀世界では無く午後五時にしては暗すぎるどこか吸い込まれそうな世界が、窓の向こうには広がっている。この季節なら雪くらい降ってくれてもいいもの、地域柄か私の住んでいる土地では降らない事の方が多い。
そんなムードの欠けらも無い放課後に同じ様に優しさの欠けらも無い言葉をかけて来たのは、この目の前にいる彼だった。

「そこは、大丈夫かって慰めません？普通は」
彼は人に優しくするという機能があまり発達していないんだろう。才気に恵まれているのにこういった不器用な所があるのは、大昔に流行ったギャップ萌えというやつだろう。
もっとも彼は、ただ私の言動で遊んでいるだけな気がするが。

「お前が蒔いた種だろう。お前が刈り取るしかないな。」
そうやって頬杖をつく彼の顔が私を馬鹿にしている様で、それでいてこの私の状況を楽しんでいる様にも見えてふつふつと怒りが湧き上がりそうだ。だが確かに自ら蒔いた種なのだから、私が収穫するのは当然の事だ。私がお門違いなのかもしれない。

事の発端は、私が彼氏がいると言ってしまったのが原因だ。話していた彼女の声色は明らかに変わって落胆した様な不機嫌な様なそんな話し方だった。
話し終えた直後は良かった。彼女に一泡吹かせてやったと鼻高々にしていたがそれも長くは続かなかったのだ。