一途な天才軍師くん (ページ2)

今日:5 hit、昨日:8 hit、合計:4,699 hit

卵焼きと美術室ページ2

・

母が毎日用意してくれている朝食にはだし巻き玉子が必ず出る。温かい白米とお味噌汁と焼き魚、そしてだし巻き玉子。この時代では珍しいくらいの和食の朝。中学からのお友達からはだせぇって言われるかもな。
でも私はそんな母の料理が一番好きだ。

「Aさん、今日は調理実習ですわね！」
大好きなみやびちゃんが登校してすぐにそう言いにきた。礼儀正しく可愛らしいみやびちゃんはきっとお料理も上手なんじゃないかなと想像を膨らませる。
お料理をしない訳では無いがあまり得意な方では無い私がみやびちゃんと同じ班になったら、迷惑かけちゃうかなと少し気分が落ち込んだ。
「そうだね。美味しくなるように頑張ろうね。」
私がそう言うとみやびちゃんは可愛らしくにこやかに笑いかけてきた。

「お前めっちゃ上手いじゃんか！！」
私と同じ班になったおふざけ四人組の内三人である井伊くん、酒井くん、榊原くんに褒めちぎられるとは思ってもいなかった。
残りの一人である本多くんは織田くんに食べてもらいたい卵焼きを真剣に作っていた。
「私お料理下手な方だよ？」
「Aが下手だったら俺ら全然じゃん！」
「そうだよ！俺らどうなんだよ！」

三人がこうやって褒めてくれるからプロの料理人にでもなった気がする。
確か先生がさっき卵焼きはプロが作っても難しいと言っていたことを思い出した。
もし先生に食べてもらって美味しいと言ってくれたら黒田くんにも食べてもらいたいな。

「黒田くん！」
お昼のチャイムがなって数分後教室を出ていこうとしていた黒田くんに声を掛けた。
いつも誰かと食べるわけでも無い黒田くんは私がお昼に誘わないといつも何処かに行ってしまう。
「なんだAか、どうした」
「お弁当、一緒に食べませんか？」
なんだかいつもより緊張して敬語になってしまった。変だったかななんて思っていたら、それを黒田くんにつっこまれてしまった。
いつもこうやって揚げ足を取る黒田くんはやっぱり策士だ。

「弁当、一緒に食べるのではないのか？」
黒田くんはそういっていつもの私達の団欒場所に足を進めた。