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リボンが1つ ページ7

「え、ひったくりがあったんですか!?」
一人から驚愕の声が上がると、周囲の町民らは待ってましたと言わんばかりに口々に語りだす。

「そうなんです、最近ね――」
「皆さんは――」
「無能力者が――」

止まらない一方的な会話に苦笑しつつ、自身の長い金の髪を柔らかく撫でる。
この話好き達の言葉が飛び交う時間に興じてみる事について、彼は嫌いではない。不規則に並んだ山吹色のレンガの上に上手くブーツを乗せて、多くの人々の足音や馬車が通っていく音を背景に、数人の織り成す騒がしい多弁に耳を傾けるのは、いつも旅の中の素晴らしい記憶だった。

とは言え、もはや世間の当たり前となった無能力者差別だけは、いつまで経っても慣れないもののようだが。
平和の為にと各地を巡っているのに目の前でこんな話をされては、さすがの彼も己の無力を責めるしかないというものだ。
「(あぁ、全くどうして、仲間意識を持つばかりに差別だなんて――)」

「マリヤさんが出ていっちゃうのは心配だわ」
「ええ、本当に……」
名前を呼ばれた事で、意識がはっきりと現実に引き戻される。小さく首を振って、異型の右手とは違う左手でベレー帽を深く被ると、暫く振りの言葉を発する。「ふふふ、大丈夫ですよ」

「僕がいなくても、カナモスの先輩方――オーベロンさんや、マグノリアさん、八神さん……沢山の方がいます。皆さん僕よりずっと強いですから、安心していてください」

確かな実力者の名を挙げられれば、大抵は納得する他ないだろう。数人は頷いたり、了とする声を返した後、再び得意のお喋りを始めた。

さて、このままでは空が橙色になるまでここに立つ羽目になる。マリヤは適当に別れを告げると、駐屯街を出て足を進めた。
手には旅の備品を保管しておく為のポーチが開いた状態で握られており、彼はその中身を数えながら確認しているようだ。
赤、緑、紫といった色で豪奢に装飾されたクッキー、それらより地味ではあるものの良い引き立て役のチョコレート、洒落たデザインの銀紙に包まれた菓子達。

「(これはアミナさんに。これは先輩に会った時……いや、会うかなぁ?まあいいか、それからこれは――)」


「――悩。今、どうしてるんでしょうか」

瞬間、浮かんだ考えを振り払うように頭を振るうと、慣れた手付きで爪長の右手に巻き付いた魔装具に魔力瓶を装填する。これから向かう場所は、こうでもしないと彼は歩けない。
そうして全てを確かめ終えると、静かに神樹へと歩いていった。

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メイドのもも(プロフ) - 桜花で更新します (2020年5月19日 9時) (レス) id: 3d1581623e (このIDを非表示/違反報告)
梨兎(プロフ) - 更新終わりました! (2019年12月19日 4時) (レス) id: f393b65561 (このIDを非表示/違反報告)
梨兎(プロフ) - 鈴ノ枝 海景で更新します! (2019年12月19日 4時) (レス) id: f393b65561 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜月姫(プロフ) - 更新完了です! (2019年12月19日 3時) (レス) id: 876f512bd1 (このIDを非表示/違反報告)
十六夜月姫(プロフ) - 夜遅くにすみません!マグノリアとオーベロンの1話ずつ更新します! (2019年12月19日 2時) (レス) id: 876f512bd1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:菜の葉 x他11人 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年8月4日 21時

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