君を手に入れたくて。 (ページ19)

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19.恋心ページ19

私はスタンの荷物を持って朝早くから家の前に居る。

チャイムを鳴らすと父親らしき人が出てきて、スタンを呼びに行った。

少ししてから大慌てで階段を駆け下りてくる彼の姿を捉えた。

急いで着替えたんだろう。

ボタンがかけ違えていたり、いつもならズボンにインしているはずのシャツが出ていたり、ベルトも適当でしっかりとしていなかった。

寝癖はいつもの髪型よりところどころはねていたが目立ってはいなかった。

ぷぷっ、と笑っていると彼は恥ずかしそうに口を開いた。

『ご、ごめん。ぐっすり寝てたよ…』

「でしょうね、ボタンかけ違えてるもの」

と指摘すれば顔を赤くしながらサッと直す。

「はい、あなたの荷物よ」

次はちゃんと持って帰ってね！と伝え別れようとした。

そのとき私の手首をぎゅっと掴む彼、振り返りどうしたの？と声を掛けると慌てていた。

『い、いや！何も無いよ！あ、危ないから送ってってあげる。待ってて』

え、あ、うん。と困りながら返答したあと数分後に戻ってきた。

『さぁ、行こう？』

ふわり、と微笑み手を差し出す彼に心臓が腹立つほどうるさく鳴り響く。

「え、えぇ！ありがとう！」

にこ、と笑顔で返しては手を握る。

話しながら歩いていると時間は進むのが早かった。

もう少しで家についてしまう。ここを右に曲がると着いてしまう。

自然と足取りが重くなり止まってしまった。
心配なのかこちらを覗き込む彼。

『だ、大丈夫？具合い悪かった？』

「……いえ、大丈夫よ。ちょっと、」

きょと、とする彼に私は恥ずかしいも何も無く、ただ伝えたいから

「ちょっと家に着くの早いなぁって！私、まだスタンと一緒に居たいんだけどなぁ」

と言う。すると彼は

『ぼ、僕も思ってた。あ、あの。家に帰る前にアイス食べたりとかして出掛けよう？』

と誘われる。そんなの、断る理由はない。

別の道へ移動しゲーセンに寄ったりショップに行ったりした。

ゲーセンでリッチーに出会って冷ややかされたり、エディとビルにも会って少しお話もした。

楽しいと時間はあっという間。

日が暮れて夕日が綺麗に見える。

ずっと心臓がうるさかった。緊張ばっかでいつも通り出来ていたかも分からない。

でも分かった。

いつも優しい彼にいつの間にか私は目が離せなかった。

この気持ち…私は

スタンが好きなんだって。