君を手に入れたくて。 (ページ12)

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12.雨ページ12

頬に冷たい何かが伝う。

次第に強くなる何か。

体がびちゃびちゃになっていても私は歩いている。
こんな真冬日に。手や頬、耳が真っ赤になり段々痛くなってきた。

そして、私は目的地であるスタンの家の前に居た。

インターホンを押せばいいのに、手が震え思うように動かない。

いや、正直に言えばスタンと会うのが怖いのだ。私が傷付けた相手に会うのが怖い。

許してくれるだろうか、絶交されたらどうしようか、など考えてしまい、中々自分から行くのは苦手だったりする。

すると目の前のドアが開き、そこに姿を現したのは会うのが怖いと思って居たスタンだった。

『……』

こちらを見て驚いていたが無言で見つめてくる彼に恐怖心が積もり、ますます震えてきた。

「や、ぁ。スタン…えっと、君に、少し用事が、」

俯いては一生懸命明るく演じようとするが声が震え、怯えている感じになってしまった。

『お父さんが玄関前に人が居るから見てこいって言われて来たけど、用事って何かな』

冷たく言われた気がして、最悪な場合になるのが怖くて。

「朝はごめんなさい！！まさか、まさか貴方がそんなに怒ると思わなくてｯ、大嫌いって言われて悲しくて、だから謝りに来ただけなの！大嫌いでも構わないわ、私は大好きだから…ｯ。それじゃあね！」

途中で涙が止まらず早口で捲し立てる。

じゃあね、と言い終えればすぐさま走り出した。彼が待って、と言う言葉も気にせずに。

例え貴方に嫌われても、私は好きでいるから。

だって、最高の友達だもの。

大分走ってきた。

ここは、キスの橋。私はそこに震える手で文字を掘る。

仲直りができますように、と願いを込めて。

カップルに有名な橋に、私は自分の名前とスタンリーの名前の頭文字を取り掘った。

橋を背に座り込む。

「さ、むい…、」

自分の体を包み込むように座る。

「ここ、初めて、来たから、、道、わかんない、な。」

涙が再び溢れてきてはグスグスと泣き出し。

日が暮れる前に帰れたらいいな、そう呟いたあと目を閉じた。

ザッザッと雪を押しつぶす音が微かに聞こえていたけれど、もう何も分からなかった。

ふわっ、と体が浮く感覚。死んだのかなぁ、なんて思い目をうっすらと開く。

そこには鼻も頬も真っ赤にしているスタンの顔があった。

びしょ濡れだった。傘を差して来ないで私を追いかけたのだろう。

声を出そうとしたが何も出来ずまた眠ってしまった。