彼氏との日常 (ページ27)

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・JMside ページ27

『私には何も無いんだー。』

もう一度、その意味を反復するように彼女は軽い口調でそう言った。

『あ、名前と年齢くらいは言えるよ。名前はAで、年齢は21歳だからジミンより年上だよ！ヌナって呼んで！』

そう彼女、ヌナは笑いかけてきたけどうまく答えられなかった。

そんな僕の様子を感じとってか、ヌナはゆっくりと話し始めた。

『家族は幼少期から関係が悪くて、両親がどちらとも仕事に逃げるように家を出ることが多くてね。だから思い出も全くないの。あ、海外からのお土産を送ってくれたことかな？』

そうおどけるように付け足した彼女は、さらに続ける。

『友達はいないんだー、ずっとほぼ病院にいたから当然だよね。だからほぼ学校も行ったことなくてそんな思い出もなし。あ、ちゃんとここで勉強してたから常識はあるよ！』

ヌナの気遣いだろうか、わざと空気を重くしないように明るく振舞ってくれている気がする。

でもそんな気遣いすら苦しくて僕は顔を歪めてしまった。

そんな僕を見て、ヌナはまた笑った。

『でもね、今日初めて好きなものに出会えたの。』

JM「…なにに？」

『ジミン！』

そう屈託なく笑うヌナは、今日見てきた表情の中で一番生気に満ち溢れていて自然と目を奪われた。

へへ、と照れるように頬をかいたヌナは続けた。

『正直、私死のうとしてなかったって言ったら嘘になるんだ。半分本気で半分冗談って感じ。』

突然告げられた事実に言葉が出ない。胸がギュッと掴まれて喉も締められているような感覚だ。

『でも、死んだらここまで面倒見てくれた先生に悪いなとか、ずっとお金を出してくれてる両親にも悪いなとか色々思っちゃって。』

薄く微笑むヌナは俯いて言葉を紡いでいく。

『でもね、ふと気づいちゃったんだ。私、自分のために生きたいと思ったことあった？ってね。』

その言葉を口にしたヌナの声は少し震えていた。

それでもずっと浮かべていた笑みを崩そうとはしない。ギュッと耐えるように唇を引き結び、顔をあげたヌナと目が合う。

『でもジミンを見た瞬間、私生きたいって思ったの。不思議だよね。』

優しく優しく僕に笑いかけてくれるヌナは今にも泣き出してしまいそうで、身体が勝手に動いていた。

僕はヌナを腕の中に閉じ込めていた。

JM「僕がヌナの生きたい理由になってもいいですか？」

ヌナは何も言わずにの背中に縋り付いて、僕の肩を濡らした。