-M.I side- ページ9
バレンタイン。
登校すれば、机の上に山積みのチョコ。
誰からかもわからないし、正直困る。
はしもっちゃんはみんなからのチョコを嬉しそうにカバンに詰めている。俺も持ってきたカバンに一つずつ詰めるけれど、俺だけに送ってくれる子はこの中に何人いるんだろうって考えてしまう。
「瑞稀!はい!」
「瑞稀くん、私も〜」
他クラスの女子に囲まれてはしもっちゃんと一緒にたくさんもらって。友チョコ!なんて言いながらくれるけど、友チョコって何?
本命しかいらないし、俺以外を見るようなやつなんてどうでもいいんだけど。
放課後、
はしもっちゃんは予定があると言って先に帰ってしまった。
教室には、俺とAさんだけ。俺は荷物をようやくまとめ終え、いつもより重いカバンを持って帰ろうとした。
「あ、あの」
と 声をかけられる。今まで聞いた彼女の声で1番大きな声。
「こっ、これ」
そう言って渡されたのは、赤い袋に金のリボンでラッピングされた、今日俺が見飽きたもの。あーまたか、なんて思いつつ、笑顔でありがとうと言って受け取ろうとすれば、
君が少し背伸びして 顔を近づけて
「瑞稀くんだけだから」
そう言って、顔を真っ赤にしていなくなる。
なにそれ。
気になっちゃうじゃん。
手元に残ったのは、誰よりも丁寧に包装されたチョコレート。思わずその場でリボンを解いてひとつ頬張れば、高級チョコでも感じた事のない、優しい甘さが広がって。
ねえ、君のこと もっと俺に教えてよ。
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作者名:花奏悠 | 作成日時:2019年2月12日 23時