-R.H ver 1- ページ5
今日も橋本先輩はかっこいい。
井上瑞稀先輩と一緒に登校してる姿は最高で。その2人を見ながら登校できるのは通学が途中まで一緒の私の特権。
登下校は私の至福の時間だった。
2月14日。話せるか、いや会えるかもわからない橋本先輩への手作りチョコを準備して寝坊だなんて恥ずかしすぎるし先輩に会える数少ないチャンスを自ら消してしまった。早い電車に乗って、人が少ない中先輩を拝むのがルーティンなのに…。この時間の電車は先輩はいないし人は多いしもう最悪。そんなことを考えながら、サラリーマンで溢れた電車に乗り込んだ。
生きた心地がしない。人が多すぎて押しつぶされそう。すぐに降りれるようにってドアの近くにいたけど、どんどん流されて多分車内の真ん中にいるだろう。
電車のアナウンスで降りる駅だと気づく。
「すみませんっおります!」
そう言って人混みを掻き分けて進もうとするけど全然ドアまで辿りつけない。
(やばい降りられない!)
と思った瞬間、誰かが私の手を引いてホームへと連れ出した。
「あっぶなかった〜」
そう言って笑いながらこちらを見てくるのはあの橋本先輩で。
「君も寝坊?」
だなんてさわやかに聞かれたから
「は、ふぁい!」
って気の抜けた返事をしてしまった。何その返事って笑ってくれる先輩。
なんで橋本先輩もこの電車に?
疑問はあるけれど、とりあえずは
「ありがとうございます!」
と言って頭を下げた。
「全然大丈夫。俺すぐ学校言って瑞稀に謝んないといけないから、先行くね」
そう言っていなくなる先輩に、すぐに渡すべきだったかもしれないけれど、やっぱり少し落ち着いてから渡したくて。あのって言って引き止めた。不思議そうに振り返る先輩に小走りで近寄る。
「先輩っ、昼休みって予定ありますか?」
なんとなく切り出したつもりだけど、思えば今すぐチョコを渡すのより勇気ある行動だと思う。今日は特にないかなーって先輩がいうから、思わず教室に行きますなんて言っちゃって。
笑顔で学校に向かう橋本先輩の背中を見つめて、私も歩き出した。
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作者名:花奏悠 | 作成日時:2019年2月12日 23時