309話 ページ9
｢パパ｣
岩の上で紙を見つめる入道パパに声をかける
｢どうした｣
いつも影で真剣に考えている姿は誰も知ることなく上手く隠されている
｢今日の夕方頃にここに着く予定だからデーターを持ってこようと思って
あと、寝床も確保しておかねえと｣
昨日スマホを駆使して作ったあいつらのデーターが書かれた紙を上着のポケットから出す
USBメモリをチラつかせばお菓子が出てくるのでお互いにそれを投げ物々交換する
｢ん、ホワイトチョコか。いいな｣
すぐに口に入れよく味わっておく
糖分は大切だからな
｢寝床はワシの宿を使え
なにかあったら……｣
そう悔やむような声は聞くには少し辛すぎる
優しい思いやりに感謝しながら要は済んだのですぐにアイツらの元に帰る
すーぐ心配するんだから早く帰らないと
そう思い木に飛び移り空を歩くように移動した
時短になり30分程というあまり違和感のない散歩に見えそうだ
｢怪我はしてないか｣
腕を組み仁王立ちで待ち構えていた真田は眉をひそめてそう聞いてくる
｢してない。ありがとう｣
本当にあの件依頼とても過保護だ
俺はもう大丈夫なのに
｢A、話したいことがある
少し時間……いいか｣
その言葉で何が起こるか分からないほど馬鹿じゃない
それでも顔には出さずいつも通りに振る舞う
｢あぁ、ここで大丈夫か？｣
少し離れたところからワイワイ騒ぐ声が聞こえる
｢あぁ。大丈夫だ｣
次の言葉を言われるのが少し怖い
今までの友情というものが壊れる気がして
壁ができてしまうような
もう二度と心の底から本心を話すことが出来なくなりそうで……
それでも聞かない理由はない
それを受け止めるのが今の俺の仕事
真田は少し目を瞑っていたが覚悟を決めたように深呼吸をしゆっくり目を開ける
｢聞いてくれ、俺はお前が好きだ
それは今も、これからもだ｣
まっすぐと目を見つめられ迷いのない瞳で見られると少し苦しい
｢あぁ、｣
｢だが俺はお前と友人でもいたいと思う
ワガママなのは重々承知している｣
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作者名：I like choco. | 作成日時：2021年8月25日 23時
