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シャキン!
鋭い音が辺りに響いて、散らばったのは赤い飛沫。鬼の右腕は斬り落とされ、鬼の顔にも斜めに線が入った。後ろに傾く鬼は受け身を取ろうとしていない。
殺すな、殺すな、と頭の中で唱えながら息を吸い込んで脚力を強化。踏み込んだ足を軸に回転してもう片方の足を鬼の脇腹に叩き込む。
がはっ、と空気が零れる音を吐き出した鬼の体は呆気なく吹っ飛んで、近くの木にダァン! と音をさせてぶつかった。なるほど、那田蜘蛛山で女の子の糸で木に叩きつけられた私もあんな感じだったのね。そりゃ痛いわな。
けれどもこっちは緊急事態。みすみす罠(かどうかはわからないけど)に掛かりに行った先輩を一人にしてるんだから容赦なんてしていられない。右手に刀を持ったまま迷うことなく鬼に近づき、申し訳ないけれど側頭部に勢いよく足を押し付け木とおもいっきり挟んでやった。
所謂、“余計なことすると頭潰すぞ”である。なんて物騒な。
「が、ぁ゙っ……!」
漏れ出た声を気にもせず足に込める力を強める。別に頭潰そうってんじゃない。そんな物騒なことしやしない。その為に“わざと”頸を落とさなかったわけじゃない。
「……悪いけど、こっちも容赦してらんないんだよね。この森にいる血鬼術を使う鬼について、あんたの知ってること全部吐いて」
他の人間がいるかもしれないという考えで、相談無しに先輩を一人にしてるんだ。情報手土産にしないと割に合わないってもんでしょ?
◇ ◆ ◇
暗闇を駆ける。私は炭治郎みたいに鼻がよくなければ善逸みたいに耳もよくないし、伊之助みたいに索敵ができるわけでもない。私は向けられた視線しかわからないから、視線が向けられてない状態だと当たりなんてつけられない。
ただ森の奥へ奥へと走って、気配と音に集中するしかない。戦ってるなら金属音がするはずだ。善逸みたいに耳がよくなくても、近くで音がすればきっと聞こえてくるはず。
それなのに。
「っ、なぁんでさっきから音がしないかな……!」
さっきから戦ってる音がしない。金属音もなにも聞こえない。これは一体どういうこと? もしかして先輩喰われたとか? いやいやそんな、先輩強いし簡単に喰われるとかはしないだろ絶対。先輩が簡単に喰われるとか想像できないし。
じゃあどういうこと? 先輩も鬼を見失った? とか? ……だとしたら今頃めちゃくちゃイラついているのでは……?
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ユズヒ(プロフ) - たまごさんさん» おっとそのパターンは予測してなかったですね……? 美味しく味付けして食べてくださいね……。おやすみなさい!たまごさんさん(?)も風邪など引かれないようお気をつけて!! (2020年2月5日 23時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
たまごさん(プロフ) - ではおやすみなさい、体調崩されないようお気をつけください! (2020年2月5日 23時) (レス) id: e187441fa2 (このIDを非表示/違反報告)
たまごさん(プロフ) - くそぅ…間に合わなかったか…Rainさんもっと語彙力落としてください(失礼)それかユズヒさんを食べます! (2020年2月5日 23時) (レス) id: e187441fa2 (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - たまごさんさん» コメントありがとうございます! 因みにRainさんの語彙力は私が美味しく頂いたのでカケラも残っておりません。大変美味しゅうございました……(カップラーメンを眺めながら) (2020年2月5日 23時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - 夜美さん» いくら言葉があれでも声がよければ全て良しとなる…ここはそんな世界……。とんでもないです! 明日を楽しみにしててくださいね……!! (2020年2月5日 23時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:
作成日時:2019年12月8日 16時