【鬼滅の刃】神様の巫女 陸

第65話 神を自称した男 ページ38

「不思議な力を使う神と名乗る存在……。日に当たっても死ぬことはなく、住んでいる山小屋の周りは藤の花で囲まれている。そして、その“神”というものが私達が認識している“守り神”というもので、鬼を狩っている、と」

「はい」

「正気かね？」


後ろからなんかネチッとした声がしたけど至って正気です。

なんとか一通り、頑張ってわかるように説明した(つもり)。けれどもやっぱり、珠世さんに話した時も思ったけど私なに言ってんだろう。
ネチッとした声の人じゃないけど正気を疑うレベル。

いやだって初見の人間にいきなり神様の存在説かれてみろよ。なに言ってんだこいつってなるじゃん。私はなるわ。宗教勧誘は望んでねーんだわ。
でも残念かな、これは真実でして。信じてもらえないことには話が進まない。


「興味深いね」


なんて思っていたら、目の前のこの人はそう言って微笑んだ。……え、信じた？ マジ？ 本当に？
思わずきょとんとしてしまったのは仕方がない。男の人……えっとお館様？ の両脇に立つ女の子の一人に「きょとんとしています」と告げ口された。くすくすと聞こえる笑い声のなんと優雅なこと。寒気しかしない。


「その“神様”とやらには、協力を仰げないのかな」

「鬼狩りの、ですか？ あーどうでしょう。あいつそもそも、供え物があるから鬼狩ってるってだけで人間にはそこまで興味無いですし……。というより、もし気まぐれで手を貸すってなっても鬼殺隊にってなるとどうだか……」

「どうしてだい？」


聞かれて、黙ったままじとりとまた義勇さんを見る。何回も違う意味合いの視線を向けられて、義勇さんがこっちに向ける視線にだんだん戸惑いが混じってきた。なんか楽しいな。
……あ、クソ美丈夫と目が合った楽しくない。


「…………私がいない間に、どこぞの誰かが山に張ってる注連縄の内側に入った挙句、自分のことを“神”と宣(のたま)ったおかげであいつめちゃくちゃ怒ってるんですよね」


言えば、ぴくりと動いたのはクソ美丈夫だった。…………うん？
確か神様は“顔立ちがいい派手な見た目な奴”と言っていた。黒髪は義勇さんとして……派手な見た目、とは。
あれれ〜？ ここにいる中で私一人しか当たりつけられないぞ〜？


「そんなことを言ってしまったのかい、天元」


最悪なことに、クソ美丈夫は神を自称した馬鹿野郎でした。

＊→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す