【鬼滅の刃】神様の巫女 陸

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崩れた後は何も残らない。そんなの今更だと思うけど、やっぱりなんか、虚しいと思ってしまう。残った着物が平たくなって地面の一部を彩っていた。


「うっ……はぁ……」


その場に崩れ落ちるもなんとか耐えて、地面にお尻をついてしゃがみ込むだけに留めた。
身体が痛い。痛い上に重い。左腕は当たり前の様に動かないし、足の感覚だってそろそろ危ない感じだ。けれども、まあ、とりあえず。


「っはあﾞ〜〜〜〜……しんっっど……」


大きく息を吐き出して項垂れる。毒を流し込まれた身体で戦うとか初めてだし、そんな状態で“神の呼吸”を使うのだって初めてで。右腕が無事なのが奇跡。でもなんか肋折れたから無傷ってわけでもないですね。しんどい。

は？ なら最初から“神の呼吸”使っとけって？ だって！！ 使いたく！！ なかったから！！ 仕方なくない！？


「…………」


視線を平たくなった着物に滑らせて見てみる。女の子は泣いていた。ごめん、と言って涙を流していた。守れなくてごめん、と、言っていた。

その姿がなんだか、もしもの自分に重なって。もしかしたらあれは、私だったかもしれなくて。私がああなっていたかもしれなくて。そう思うとぞっとして、同時に胸がきゅっとした。
生きた心地がしないっていうのと、これはなんだろう。こう、なに……あ、無理言語化難しい。


「……あ」


よっこいしょ、といつも以上に力を入れて立ち上がる。よたりとフラついたのは足の感覚が消えかけてるからです。やべぇ。
よたよたとしながらも着物に歩いて行く。一箇所だけ盛り上がった所か気になって着物を持ち上げてみると、そこには女の子が大事に抱えていた布の塊があった。


「……お人形、か」


ただ布をぐるぐる巻きにしただけのものだ。手もないし足だってない。細い帯が上の方で結ばれてるから、多分帯の上は頭ってことなんだと思う。これを人形と呼んで、可愛いと言っていた。


「これが、あんたが繋ぎ止めておきたかったものだったのかな」


当然ながら、返事なんてない。だってあの子は私が斬っちゃったからね。私の大事な人達を守る為に、大事な誰かがいるはずのこの子を斬った。…………はあ。
今までこんなこと考えたことなかったのに、なんだろうな。


「ははっ……虚しすぎるでしょ……」


ねぇ、と布の塊に問うてみたけど返事はない。
……ああやっぱり。彼女にとってのお人形は、私にとってはただの布の塊だ。

第63話 朝日が昇る→←＊

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