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「やだやだやだ〜〜!! 今日はこの色がいいの! この色じゃなきゃ嫌なの〜!!」
目の前で大の字になりバタバタと暴れる女性は、どうやら紅の色がお気に召さないらしい。今日は赤より桃色の紅がいいとのことだけど……桃色の紅は生憎空っぽ。品切れ、というやつで。
…………就職して一時間も経ってないのにこの状況。私、もしかしなくとも就職先間違ったかもしれない。
目の前で暴れているのはこの店の花魁、
くりっとした目、つんとした鼻、形のいい唇。艶のある綺麗な声は客を和ませ、細くしなやかな指に触れるだけで、何百の金が飛ぶという、つまりは売れっ子なわけだ。
他にも、ときと屋の鯉夏花魁、京極屋の蕨姫花魁といった売れっ子花魁がいるのだけど、その二人に劣らず、彼女は芸ができて美しいらしい。
…………現状を見たら到底信じられないんだけどね。
「いやこの色って……桃色無いでしょ。赤で我慢してくださいよ」
畳に転がっていた紅を見ても、中身は空っぽ。せいぜい隅に少し残ってる程度だけど、これじゃあ唇を飾るのには到底足りやしない。
「嫌よ! 今日は桃色の気分なの! 桃色がないなら今日はお客のとこになんて出ないんだから〜〜!!」
「我儘だなぁ……」
この店に着いてすぐ、この泡雪花魁につけられた。曰く、あなたもすぐに客前に出すんだから、早く遊女として必要なものを学びなさい、らしい。笑顔でそう言われた。そんなことってある? 私が知ってる遊女って、そんな一日二日で床に出てる感じじゃなかったんだけど??
で、襖をやり手の女将さんが開けた瞬間目に飛び込んできた光景が、これ。
女将さんは「早く支度しなさいね〜」なんて呑気に言ってどこかに行っちゃった所から察するに、これは“いつものこと”なんだろうけど……初対面の私はどうしたらいいのやら。
「しかもなによ! 泡雪よりかわ、かわ……ちょっと女将さんは!? なんでこの子、泡雪につけたの!? しかも見覚え無いわよ! 泡雪よりこんな、こんな……こんな子!!」
「まあ、さっき来たので」
「さっき!!??」
ぎゃん、と泡雪花魁の顔が驚愕の色に染まって、あからさまに狼狽出した。え、なに。
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ユズヒ(プロフ) - 星さん» コメントありがとうございます! そして大変長らくお待たせ致しました! 更新並びに続編に移行致しましたので、ぜひお読み頂ければと思います!! (4月2日 2時) (レス) id: 53b9d42206 (このIDを非表示/違反報告)
星 - ...よし、もう一周見てくるか! (4月1日 12時) (レス) @page46 id: 807ae8eba5 (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - maiさん» コメントありがとうございます! わーー!!頑張ります!!!! (10月13日 22時) (レス) id: 53b9d42206 (このIDを非表示/違反報告)
mai(プロフ) - 更新楽しみにしています😭 (10月12日 13時) (レス) @page46 id: bfff11b4c7 (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - 青白の狼さん» コメントありがとうございます!そして録の更新を怠ってしまい申し訳ありません…!先程、録を更新してまいりました。夢主を指名した鬼の設定はまだ明かせませんが、今までに出てきた鬼や人の設定を追加しておりますので、お時間ある時にお読み頂ければ幸いです〜! (6月5日 23時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:
作成日時:2022年11月14日 3時