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「なに、いって」
「二人ともいい人だったんだけどね。俺、Aと二人でいたかったからさ」
「なにいってるの」
「俺が稼げるようになったから、もう要らないかなって思って、家もろとも燃やしちゃったんだよね」
「なにいってるの……!」
「ほら、Aも学校で習ったでしょ? 要らないものは捨てましょう。ゴミはゴミ箱にって」
シャキン。
鋭い音と、鼻をつく鉄の匂い。私の右手には脇差。私のお腹をぐりぐり押していた兄さんの手首から先はぼとりと地面に落ちた。
「……あれ。俺、何か気に触るようなこと言ったかな」
「っ、父さんも母さんも、ゴミなんかじゃないっ」
は、は、と短い息を零して、震える手で刀の柄を握りながら兄さんを睨みつける。あんな優しい二人をなんで兄さんはゴミだなんて言えるの。遠くで凄まじい轟音がした。けれども今はそんな事を気にしている余裕がない。
ふむ、と考える素振りをした兄さんは、私が斬り落とした腕をめきめきばきばきと音を立てて治しながら、でもさあ、なんて呑気に口にした。
「必要なくなったって意味ではゴミも同然じゃない? 俺何も間違ってないと思うんだけど」
「だからっ!」
「そもそも、前から……ああこの場合の“前”っていうのは前世の事ね。前から思ってたんだけど、Aは家族っていうのを美化しすぎだよね」
「はっ、?」
「家族なんてさ、結局は血の繋がっただけの赤の他人なんだよ?」
息が止まった。例えじゃなくて本当に。今兄さんはなんて言った? 赤の他人? 家族が、血の繋がっただけの、赤の他人? 何言ってるの? さっきから本当に何を、言ってるの?
「そんなこと、そんなことないっ。そんな事、赤の他人だなんて、そんなっ……!」
「そんなことない? でも俺にとってはそうだったよ。俺にとっては、あの二人は赤の他人だった」
ぐしゃりと顔が歪む感覚。意味がわからなくて頭の中がぐちゃぐちゃで、鼻の奥がツンとする。声がだんだん震えてきて、おまけに掠れてきた。
「っ、なん、で……なんで、そんな……なんで……」
「んー? じゃあAは? Aにとってあの二人はなんだったの? 血の繋がった家族? 違うよね?」
「なに、いって」
え? そう言って、兄さんはきょとりとした顔をした。背筋を嫌な汗が伝う。
「いやだって、Aは養子なんだから。俺と違って、本当にあの二人とは血の繋がりなんて無かったでしょ? じゃあ赤の他人じゃない?」
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ユズヒ(プロフ) - 莉久さん» たくさんコメントありがとうございます!!嬉しい!!やっとこさ本格的に遊郭編に入りました!宇髄さんと絡ませるの楽しいので、もっと沢山絡ませたい欲が…ぐへへ…。いつもありがとうございます!励みになりますー!! (2022年11月7日 22時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
莉久 - もう何回のコメントしてすいません!だけど!私の脳がテンションを抑えきれなくてッ!アァァァッッ本格的に遊郭編突入!楽しみでしかない…✨✨文章がっ、溢れ出るこの文才…✨主ちゃんが可愛すぎます…宇隨さんとの絡み最高です!更新頑張ってください! (2022年11月7日 22時) (レス) @page48 id: 28e45e7c9c (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - 莉久さん» コメントありがとうございます!!やっと宇髄さん出せました!!これから遊郭編頑張っていきますー!!いいですよね宇髄さん。これからたくさん夢主に絡ませるぞ!嬉しいお言葉を文字数いっぱい…いつもありがとうございます…!これからも宜しくお願いしますー!! (2022年10月26日 2時) (レス) @page42 id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
莉久 - 久しぶりの更新有難う御座いますッッッ寝る前に読もうとしたらテンション爆上がりなりました!!!⤴主ちゃん遊郭編楽しみだなー!やっぱ宇髄さんのキャラいいわぁ…好きィ(^^ω)毎回話の内容の尊さに悶え 、文才の差を噛み締めております。続き楽しみです!…字数ゥッ (2022年10月26日 0時) (レス) @page42 id: 28e45e7c9c (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - 莉久さん» コメントありがとうございます!嬉しいお言葉の数々、ベッドの上で転げ回りながら感受致しました!本当にありがとうございます…!マイペースなノロノロ更新ですが、末永くお付き合い頂ければ幸いです〜!! (2022年9月27日 0時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:
作成日時:2021年12月20日 0時