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「……俺ねぇ、やっと妹に逢えたんだよね。猗窩座の視界借りてたお前なら知ってると思うんだけど、長い間探してた子がやっと見つかってさあ。もうね、本当可愛いの。昔と変わらず可愛くてね。やっと、やっと一緒になれると思ったのにさぁ。兄妹仲良く、ずっと一緒にいられると、思ったんだけどさぁ」
「…………」
どろり。空気が濁る感覚。本の頁を捲る音が止んだ。
「それを、なにあれ。神の呼吸? 金の刀? 本当ふざけてる。人の妹に何してくれてんだよ。何染め上げてくれてんだよ。あの子は俺のものなのに俺だけのものなのにっ。終いにはなに? 夜明け? あと少しだったのに、あとちょっとだったのに、その手前で夜が明けるってなんだよ」
「…………神?」
無惨がその一文字に反応して祷折を見た。その視線に気づかず、話の主は変わらず舌をぺらぺらと動かしていく。
「そうだよ神。神様。俺とあの子を引き裂く蛆虫。これだから神も運命も嫌いなんだよ。一体なんの権利があって俺達に干渉してくるんだか」
ぎりぎりと歯軋りをしていた祷折の歯がばきりと折れた。瞬時に再生した歯が、歯軋りの圧を受けてみしみし音を立てる。
「……ぁ゙〜〜〜〜〜〜。どうしよう。殺したいなぁ。あの子に剣術教えた奴、滅茶苦茶にして殺してやりたい」
「祷折」
「刀とかさぁ、粉々に砕いて食わせてやりたいよね。粗めの方がいいかな。ちゃんと飲み込ませてやって、内臓ぐちゃぐちゃに掻き混ぜて」
「祷折」
重たい声が部屋を満たして、祷折は思わず言葉を飲み込んだ。頭に昇った血がゆっくりとゆっくりと降りていく。
暫くして、はー、と俯いて長く息を吐いた後、祷折はその態勢のまま先程より幾分か落ち着いた声を発した。
「……ごめん。頭に血が昇り過ぎてた」
「良い。貴様に何を言っても無駄なのはとうの昔に分かりきっている」
閉じた本を棚に戻し、無惨は振り返る事なく次の本に手をかけた。片手で顔を覆った祷折は、打って変わって静かな声で「でもさぁ」と言葉を舌に乗せる。
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ユズヒ(プロフ) - 莉久さん» たくさんコメントありがとうございます!!嬉しい!!やっとこさ本格的に遊郭編に入りました!宇髄さんと絡ませるの楽しいので、もっと沢山絡ませたい欲が…ぐへへ…。いつもありがとうございます!励みになりますー!! (2022年11月7日 22時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
莉久 - もう何回のコメントしてすいません!だけど!私の脳がテンションを抑えきれなくてッ!アァァァッッ本格的に遊郭編突入!楽しみでしかない…✨✨文章がっ、溢れ出るこの文才…✨主ちゃんが可愛すぎます…宇隨さんとの絡み最高です!更新頑張ってください! (2022年11月7日 22時) (レス) @page48 id: 28e45e7c9c (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - 莉久さん» コメントありがとうございます!!やっと宇髄さん出せました!!これから遊郭編頑張っていきますー!!いいですよね宇髄さん。これからたくさん夢主に絡ませるぞ!嬉しいお言葉を文字数いっぱい…いつもありがとうございます…!これからも宜しくお願いしますー!! (2022年10月26日 2時) (レス) @page42 id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
莉久 - 久しぶりの更新有難う御座いますッッッ寝る前に読もうとしたらテンション爆上がりなりました!!!⤴主ちゃん遊郭編楽しみだなー!やっぱ宇髄さんのキャラいいわぁ…好きィ(^^ω)毎回話の内容の尊さに悶え 、文才の差を噛み締めております。続き楽しみです!…字数ゥッ (2022年10月26日 0時) (レス) @page42 id: 28e45e7c9c (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - 莉久さん» コメントありがとうございます!嬉しいお言葉の数々、ベッドの上で転げ回りながら感受致しました!本当にありがとうございます…!マイペースなノロノロ更新ですが、末永くお付き合い頂ければ幸いです〜!! (2022年9月27日 0時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:
作成日時:2021年12月20日 0時