【鬼滅の刃】神様の巫女 拾壱

第96話 祷折という鬼 ページ17

颶風(ぐふう)で吹っ飛んだ兄さんを追いかけ追いつき、刀を振るって頸を斬る。呆気なく飛んだ頸は兄さんの右手で掴み取られてそのままバチュン、と嫌な音と少しの血飛沫を散らして体とくっついた。

これで三度目。頸を斬ったのに倒せない。なんだこれ、普通の雑魚鬼も実はこうだったりするの？ 頸を斬られた直後に体にくっつけたら死なないって？ そんな馬鹿な。それなら鬼殺隊が把握してないはずがない。
しかも、頸を斬られる直前に兄さんの目が青く光ったのを見てる。ってことは、これはほぼ確実に血鬼術。兄さんが持つ異能。

それなら。目が青く光った後に跳ね飛ばした頸をくっつけるのならば、目を光らせなければいいのでは？ もし“目が光る”っていうのが異能発動の条件なら、それさえ防げば頸はくっつかないのでは？
そう思ったら即行動。地面を蹴飛ばし再度兄さんとの距離を詰める。不機嫌な兄さんが気怠そうに「またそれ？」と呟いた声がした。否定はしない。けど今度のは一味違う。
手首の捻りを効かせて細かく斬撃を入れ、頸を狙う振りもした。思い出した。こういうのをフェイントって言うんだった。


血飛沫が飛んで、嫌な音を立てて兄さんの体が再生する。それでも尚不機嫌な兄さんは、体を斬られても顔色一つ変えやしない。
ザンッ。斬ったのは足。ガクン、と体勢を崩した兄さんを逃すはずもなく、柄を握り狙いを定める。ザシュッ、と細くて鋭い嫌な音。兄さんの両目を狙った斬撃は見事大当たり。ぱっくり割れて視界が奪われた隙を狙って、もう一度頸を狙う。スゥウウウウと呼吸音。

“神の呼吸 壱ノ型 魁(さきがけ)”──！

ッパン。斬る音より首が撥ね飛んだ音が辺りに響いた。兄さんの目はまだ回復していない。頸はしっかり体と断ち切られていて、鬼が死ぬ条件はきっちり揃ってる。


「……なるほどねぇ。考えたわけだ」


だと、言うのに。
兄さんの声からは焦り一つ取れなくて、でもやっぱり不機嫌で。兄さんの体が地面を踏み締めて跳び上がり、頸を回収する為に手を伸ばす。
まずい、あのまま回収されたらまた繰り返すだけだ。

兄さんの体を追いかける為に息を吸い足を強化──。

かくん。


「は、ぇ……？」


しようとしたら。急に足から力が抜けて、その場に膝を付いた。訳がわからず脳内が真っ白になる。視界の中で兄さんが頸を回収しくっつけるのが見えた。あ、またやり直しだ。

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