【呪術廻戦】神様もう人間飽きたってさ【夏油傑】

目を開けても黒 ページ25

.夏油side


特級になった。一人の任務が増えた。星漿体の任務の後の事だ。それはそうだろうと思う。特級二人をわざわざ同じ任務に遣わせない。そうなることは分かっていた、はずだ。

今まで隣には必ずのように悟が居た。それが当たり前でなかったことにようやく気付く。



｢二人で最強、か｣


脆いな。信じてやまなかったそれはいとも簡単に崩れ去る。悟は星漿体任務後明らかに何かが変わった。反転術式を使い、名実ともに最強になった。


私は？私の術式が呪霊操術でなければ間違いなく殺されていた。私は変わっていない。悟は変わったのに。冷や汗が流れた。


は、呼吸の仕方を忘れそうになる。時計の音が妙にうるさくて釣られるように鼓動が不規則で規則的に早くなる。目を瞑ると考えてしまう。


これからのことについて。悟は私のことを信じている。対等な立場であると、もし差が開くことがあったとしても必ず追い付いてくると信頼してくれている。いつもは嬉しいそれが痛くて堪らなかった。

期待が重荷となり私を苦しめる。プレッシャーを重圧ということが分かる。重くて押しつぶされてしまいそうだった。


一人きりの冷たいベッドに入る。丑三つ時。みんな寝静まっている。


それなのにうるさくて仕方がなかった。時計の音。ベッドの軋む音。自分の心臓の音。目を瞑ると音がひしめき合って私を飽和する。




声が聞こえる。沖縄のビーチ。本当に楽しそうだった。天内理子、理子ちゃん。

笑顔が、みんなと一緒にいたいと泣く姿が目の裏に焼き付いている。


自分の至らなさを知った。何が二人で最強だ。少女一人救えなくて、何が、何が最強なんだ。

悔やんでいる。怒っている。私が非術師だったのなら、特級呪霊でも生み出してしまいそうだった。


目を開けても闇が広がっていた。また今日も寝れない。寝れるのは移動中に微睡むくらいでこれから先、焼き付いたこれを抱えていくんだろうなと思う。

こんな私を見て彼女はどう言うのだろう。どうでもいいと言いそうだ。ふと体が軽くなるような気がした。

そういえば最近出会っていない。メールだってしようと思えば出来るのだがどうも気が向かなかった。最近の任務は近場であることは無い。もう会えないかもしれない。


ただ今の私を見て彼女に失望だけはされたくないと強く思った。



.

.→←.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す