公安警察のお隣さん。【降谷零】

交渉成立□降谷side ページ3

目の前には少し怪訝そうな顔をしてこちらを見つめる女性。否。女性というよりは、まだ少しだけ幼さを残した女の人。


僕の食事係をしてほしい。


なんて、我ながら初対面の人に馬鹿げた事を言ったなとは思っている。なんせこちらは三徹目。まともな思考回路なんか働くはずもないだろう？




「あの…食事係ですか…？」



降「突然こんな事を言われても困ると思うんだけど…。時間の不定期な仕事に就いていましてね。詳しくは説明できないけど、家に帰ってきて、自分1人のために自炊をする気力が残ってなくて…今日みたいにね」



そんな俺の説明を聞いて、目の前の彼女はふむふむ。と頷いている。
それにしても警戒心の薄い子だな。



普段なら絶対に見ず知らずの隣人なんて家にあげたりしない。
ましてや食事係なんて…ありえない。



だけど玄関先でつまんだロールキャベツのうまさにそんなこと考えられなくなった。
エナジードリンク漬けだった俺の体の奥深くまで染み込んだんだ。



「でも、食事係って…具体的に何をしたらいいんですか？？」




こてんと首を傾げて不思議そうな顔をする彼女。
整った顔立ちに白い肌。なのに腑抜けたその表情が少し不釣り合い。



「そうだな…。たまにこうして、僕の分の食事も一緒に作ってもらえると助かるな。
あ、もちろんお礼はしますよ。何がいいかな…」




んんー。と、交渉内容を考えていると、目の前の彼女が、パァっと閃いたように目を輝かせた。



「あ！じゃあ、こうしましょう！
私は時間が合う時には料理を振る舞う。だから、降谷さんの時間が合う時には、私を大学まで送ってください！」



降「なるほど。それはいい。そうしましょう！」


やったー！
って、ご満悦そうに笑うA
寧ろそんなのでいいのか？



「あ、じゃあ私、洗い物だけしてそろそろ自分の部屋に帰りますね！」


そう言って腕まくりをして、2人分の皿を下げキッチンに向かう。
自分の家のキッチンに女の人が立つなんて、なんだかおかしな光景だ。



料理だけじゃなく洗い物まで特典についてるのか…。得した気分だ。



「降谷さん！洗剤はこのピンクのでよかったですか？」


降「あぁ、それで大丈夫です！ありがとう」



それにしても…。まずはこの世間を知らなそうな大学生に、知らない男の家には入らないって所から教えないといけないみたいだな…。
自分の言えたことではないが。


そんなことに考えを巡らせながら、俺は睡魔に襲われていった。

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