Qes,06_悪魔の開眼 ページ7
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太宰さんに事実を告げ、三日程経ったこの日。
シトシトと雨が降っていた日だった。
今晩の夕食をどうしようかと冷蔵庫を覗いたところ、思いの外 食材の種類が少なく、渋々近くのお店まで買い出しに行こうと玄関を開け____
『太宰さん……?』
「“百目鬼さん”。一緒に来て貰うよ」
其処にはマフィアの顔をした太宰さんが立っていた。
嗚呼、泳がせる期間は終わったんですね。私を、あの魔王の様な男の前に引き摺り出すんですね。
私はそれに頷き、足下に擦り寄っていたテオを抱えて、太宰さんの後を追ってマンションを出て、表に待たされていた黒塗りの車に乗り込んだ。
「これ、返しておくよ」
『テオの……首飾り』
「君の云った通り、首領は君を殺す心算は無いらしい」
『そうですか』
太宰さんの目はいつもと違った。
寂しそうで寒そうな目ではなくて、冷たく鋭い目をしていた。
テオに触れている場所だけが、温かい気がして、ギュウ……と抱き締めていると、太宰さんがポツリと云った。
「君、マフィアに連れ戻されるのだろうね」
『あはは、矢っ張りそうなりますかね』
「あの記録に君の異能の詳細は載っていなかった。だからその異能の利用価値がどんな物かは知らない。けど、首領はきっと君を利用する為に見付け出した」
『……存じていますよ』
いつかはこうなると、そう思っていた。
寧ろ、今のあの首領が見付け出そうとしない訳が無い。
あの冷悧な眼差しは忘れられなかったものだ。
到着すれば嫌に懐かしい景色が広がっていた。たった一年と一寸、離れていただけなのに。そう思いながら太宰さんの後に続き、とうとう首領室の前までやって来てしまった。
「懐かしい? それとも緊張してる?」
『どちらとも云えますかね。それより私は怖いかもしれない』
「如何し____……」
『ふふっ、好奇心旺盛で探求心の強い太宰さんも好きですよ』
「そうかい……。首領。太宰です」
「入り給え」と中から声が掛かると、太宰さんに続いて私も部屋の中に入って彼を目の当たりにした。
「ようこそ。私は此処の首領をしている。森鷗外だ。宜しく、お嬢さん」
『お初にお目に掛かります。四季嶌Aです』
「先代の隠し刀が君の様な可愛らしいお嬢さんだとはね。さ、太宰君も交えてお茶をしながら話をしよう」
悪魔のお茶会の始まりだった。
管理番号:K2513-无-〇二四二
異能力【万華鏡(バンカキョウ)】通称“百目鬼”の使用する千里眼類似異能力。“殺人千里眼”とも呼ばれる非常に危険な異能である。また、継続した長時間使用の副作用として目の痛みや発熱、一時的な視力低下・失明を招く場合がある
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作者名:綺弌 | 作成日時:2019年1月27日 1時