観覧車から見下ろして。Q.【文豪ストレイドッグス】 (ページ6)

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Qes,05_鍵孔を覗いてページ6

(Side,太宰)

翌日、マフィアビルの周りで黒猫を探していると、彼は静かにその姿を私の目の前に現した。

「テオ、だっけ」

「みゃぁ」

「あれ……首輪の飾り、如何したのだい? 昨晩はちゃんとぶら下げていたじゃないか」

首で揺れていた青黒い色の宝石の様な硝子細工。それがこの黒猫の首に揺れていない。
別に、昨晩のあの黒猫と違うわけではない。昨晩、彼女に“テオ”と呼ばれていた黒猫は、青と金の虹彩異色の瞳を宿していたから違う筈も無い。

すると____

「おい太宰。手前、猫に向かって何話してやがる」

「げぇ……何で中也が居るの」

「この猫がさっき首にぶら下げてたの落としてったんだよ」

やって来たのは中也。
その手にはあの首飾りがユラユラとぶら下がっていた。

「それ貸して!」

「ンだよ、これ何かあるのかよ」

「大有りなのだよ。あー、良かった」

「何なんだ、それ。鍵孔付いてるけどよ」

「この中に機密情報があるって聞いてね。首領からの頼まれ事に使うのだよ」

「そンなのあったのか?」

「私、急ぐから」

「ちょ、おい!!」とか叫んでる中也を放って、私は彼女が云っていた第三地下牢へ向かう。そして、壁の孔を探すと銀色の鍵があった。

「あった……」

「何が、ありましたか」

「っ!?」

慌てて振り返ると其処には広津さんが立っていて、私の掌にある銀色の鍵と首飾りを見つめていた。

「……太宰君。彼女に接触したのですか」

「四季嶌Aさん?」

「……えぇ、そうです。その鍵と黒猫の首飾りは彼女の持ち物ですから」

「あの子の世話って広津さんがしてたの?」

「月に一度、顔を合わせています」

昨晩、彼女が話していた事は間違いないらしい。
にしても……____

「首領は知ってる?」

「いいえ。先代から、彼女の存在は必ず秘匿し、マフィアから遠ざけるように。と言い付けられていました」

「何故?」

「それは判りかねます」

「そう。これ、私が持ち出しても問題ないよね?」

「彼女が太宰君にそれの在処を教えたのならば」

私はそれを外套の衣嚢(ポケット)に仕舞い、地下牢から出て自分の執務室へと戻ってから解錠してマイクロSDカードをPCに差し込んだ。

「四季嶌A……異能力者____」

簡易履歴書に功績などが記されていた。
そしてある日を境にピタリと彼女の記録は途切れていた。