Qes,45_決別する夜に ページ46
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その日、真夜中に太宰はAの部屋を訪れた。
Aは執務机の上で髪をグシャグシャにして俯いている。
太宰は彼女の所まで行くと、
無理矢理に腕を引いて床に引き倒した。
彼女に繋がれた重い鎖が鈍い音を立てた。
『……』
「何してるの」
『何も』
「……泣いたの?」
『泣いてないです』
「目腫れてるし、グズグズだよ」
『五月蝿い……』
顔を覆おうとするAの両手を顔の両側に押さえ付け、
上からジッと覗き込む太宰。
「織田作、死んじゃった」
『……』
「織田作がね、人を救う側になれって。
その方が幾分かマシだって……。ねぇ?」
『そんな話、私にして如何するつもりですか』
目を逸らしていたAが太宰の両目を捉えた。
薄花色の瞳が涙で潤み、光を含んでいる。
「彼、君の事も心配していたのだよ。
あんなに大人びているのに、中身は子供達と同じだって。
私も云ったけど、この世界に似合わないって」
『五月蝿い五月蝿い五月蝿い……ッ!!』
太宰を強く睨み付けるも、異能は発動出来ない。
ふとそれを思い出すと、Aの抵抗は収まった。
「私がAちゃん達を逃がしてあげる。
ちゃんと外でも生活出来るように手配もする」
『今更……私に人殺し以外に何が出来ると云うんですか』
「人扶け」
『だから、私にそんな大層な事は――』
ポタリ、とAの顔に何かが滴った。
ふと、見上げると太宰の目から雫が降って来ていた。
Aはギョッとした。
だが、拘束から抜け、右手を彼の目元へとやった。
「何、してるの」
『泣き虫上司の涙を拭いています』
「泣き虫じゃない」
『……太宰さん。既に此方は手配を済ませています。
不本意ですが、浅葱が千足さんと手を回していました』
太宰は少し驚いたようにキョトンとして、ふにゃりと微笑んだ。
「そっか」
『太宰さんは?』
「私は地下に潜るよ。宛があるから、君達の経歴洗浄も頼んでおくね」
『あぁ……坂口さんですか』
「正解」
クスクスと笑い合う二人。
太宰はAを起き上がらせると、ポンっと頭を撫でた。
「……またね」
『!! ……えぇ、また』
太宰を送り出そうとした時、彼はAの手を引き――
「んっ」
『不意打ちは効きませんよ。筋肉の動きで分かります』
Aは太宰の口を押さえていた。
「ケチ」
『私より、いい人を見付けて下さい』
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管理番号:K2513-无-〇二四二
異能力【万華鏡(バンカキョウ)】通称“百目鬼”の使用する千里眼類似異能力。“殺人千里眼”とも呼ばれる非常に危険な異能である。また、継続した長時間使用の副作用として目の痛みや発熱、一時的な視力低下・失明を招く場合がある
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作者名：綺弌 | 作成日時：2019年1月27日 1時
