Qes,44_凡てに於ける死 ページ45
.
死を纏い、
死を誘い、
死を与え、
死を嫌い、
死を遠避け、
死を、望んだ。
何よりも傍にあった“死”。
この異能が他者に与えるものは苦痛と死。
遠くを望んでも、何からも逃げられなかった。
『……』
「ふふっ、善い収穫を得られたよ」
森さんの手にあるのは、“異能開業許可証”という、
異能特務課長官が発行する証書。
私は其処で悟った。
全部森さんの掌の上だったのだと。
なのに、何故か怒りも憎しみも湧かなかった。
ただ、躰全体を無気力感が襲っていた。
「四季嶌君」
『は、い……首領』
「……君は、今後も私の懐刀として働いて呉れるのだよね?」
私は俯いたまま、目を見開いた。
この人の言葉は有無を云わせぬ強制力がある。
「えぇ、勿論ですよ。首領」と答えるだけなのに、
私の口は開かないし、声が震えて言葉にならない。
「顔色が悪いね。具合が悪いのかい?」
『ぁ……ぃや、その……』
あの子達が亡くなったのは、これのため……?
織田作さんは、何をしに行くの……?
その時、部屋へ太宰さんがやって来た。
ハッとしてそちらへ顔を向けると、彼も驚いた顔をしていた。
私は太宰さんの横を通り過ぎ、部屋を飛び出していた。
昇降機に乗り、自室の階で降りると丁度莉汰と会った。
『……莉汰』
「御姉様……? 顔色悪いね。部屋戻ろうよ」
『ねぇ、莉汰。私、もう分からないよ……』
「……先刻ね、千足御兄様から連絡あったよ」
『?』
「織田作さんが敵に提示された廃れた館に向かってる」
嗚呼。
彼の人は、生きて帰るつもりは無いんだ。
もう、死ぬつもりで――。
太宰さんはそれを追い掛けに行くんだろうな。
「A御姉様は、行かないの?」
『私に、誰かを救う資格なんて無い』
そのまま部屋へ入ろうとすると、扉を血液が覆った。
振り返ると、莉汰が異能を使っていた。
『何』
「どうしてそんなに悲しそうな顔してるのに嘘吐くの」
『嘘なんか吐いてない』
「御姉様の莫迦!!」
私に向かって伸びてきた血液。
咄嗟に小刀を構えたが、それを止めたのはエリスだった。
莉汰の後ろには、森さんが立っていた。
「A、平気?」
『……はい』
「五栖鹿君」
「ごめんなさい」
「……四季嶌君、部屋に戻りなさい」
「元から、そのつもりです」
私は、襲い来る死から逃げた。
Qes,45_決別する夜に→←Qes,43_取り戻せない後悔
管理番号:K2513-无-〇二四二
異能力【万華鏡(バンカキョウ)】通称“百目鬼”の使用する千里眼類似異能力。“殺人千里眼”とも呼ばれる非常に危険な異能である。また、継続した長時間使用の副作用として目の痛みや発熱、一時的な視力低下・失明を招く場合がある
31人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:綺弌 | 作成日時:2019年1月27日 1時