Qes,38_目覚めの悪い夢 ページ39
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足にくっついて来た妃季と渋々手を繋ぎ、千足さんは莉汰と手を繋ぎながら会場の外へ出た。
其処には太宰さん達が待っていた。
『……』
「Aちゃん……?」
「千足、中は如何なりやがッた」
「ごめん、二人共。逃がした」
「……その子供は準幹部の
妃季に裏の世界なんて未だ理解出来ない。
困った顔をして私の方を見上げている。
「話、長くなりそうだから撤収してからにしない?」
「それもそうだね。分かった、そうしよう」
「織田作さん、この子達頼んでも?」
「あぁ、分かった」
私の手から離れる小さな手。
私を見詰める、その透き通った青い瞳。
全部が、怖かった。
次に目が覚めた時には白い天井の部屋だった。
薬品の匂いが鼻に付く。
寝台の傍らではテオが眠っていて、更には森さんが
「おや、目が覚めたのだね。気分は如何かね」
『……如何なったんですか』
「九十九暦と霞、鷹月輝夜、遠野浅葱は逃亡。五栖鹿莉汰と九十九妃季は保護して別室に居るよ」
『そう、ですか……』
森さんは私の方へ椅子を寄せると、数枚の書類が束ねられたものを見せてきたのだ。
其処には、全て消されていた筈の私の記録が記載されていた。
『こんなもの、如何して……』
「夜見山君が少し無理をしてね。君達は三日間休みなさい。体も心も限界だろう」
『……申し訳ありませんでした』
「……君は、何に触れても
森さんは私の頬を撫で、親指で唇をなぞる。
そして、真意の解らない言葉を残し、部屋から静かに出て行ってしまったのだった。
『私が……
ガラッと扉が開き、入って来たのは太宰さんと織田作さん。
更には妃季を抱っこした莉汰も居た。
「具合は如何だい?」
『善いとも悪いとも云い難いです』
「そっかぁ、死ぬなら私と心中しようじゃないか!」
『未だ死ねそうな感じではないので保留しておきます』
不満そうな顔で莉汰がぶすくれている。
何故、そんなに私に執着するのか判らない。
「千足に粗方話は聞いた。肩の荷は下りたのか?」
『まぁ』
下りたと云われれば、下りたのかもしれない。
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管理番号:K2513-无-〇二四二
異能力【万華鏡(バンカキョウ)】通称“百目鬼”の使用する千里眼類似異能力。“殺人千里眼”とも呼ばれる非常に危険な異能である。また、継続した長時間使用の副作用として目の痛みや発熱、一時的な視力低下・失明を招く場合がある
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作者名:綺弌 | 作成日時:2019年1月27日 1時