観覧車から見下ろして。Q.【文豪ストレイドッグス】 (ページ36)

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Qes,35_飛び交う声ページ36

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出品されている商品は全部で二十。
現在、十五番……。

「……ミゼン。ねぇ、ミゼン」

『何』

「これ、使って」

檻の外からAに声を掛けたのは莉汰。
彼はAに小刀を差し出したのだ。

『何で……』

「十六番の機(タイミング)で動くのが一番いいのは知ってる。その為に、万が一を考えて此処に妃季を連れて来てる」

『でも妃季は起きないと異能が____』

「妃季はね、僕の呼び掛けにしか反応しないんだよ」

知らなかった。
Aは驚いた顔をしてそれに渋々頷くと、小刀を服の中に隠して踞った。

「目隠しは緩めてあるから、その時に」

『皆まで云わなくていいよ』

「ふふ、そうだよね」

十六番の競売が始まる。
霞に催促された莉汰は檻を押して舞台上に出した。

「此方が本日の目玉商品です!」

バサッと布が取り払われた途端、浅葱の目が驚愕によって見開かれた。

そして、莉汰を一瞥するも彼は動じなかった。

その時、緩んでいた目隠しが外れて、Aの薄花色の瞳がゆっくりと覗き、一番手前に座っていた客の目を捉えた。

『異能力【万華鏡(バンカキョウ)・鬼雨】』

その席に居た数人の客が目を押さえて倒れ込むと、Aは緩んでいた枷から抜け出し、莉汰が事前に開けていた檻から飛び出すと小刀を構えた。

途端に後方席で千足と輝夜も争い始めた。

「やぁ、ミゼン。胸糞悪いから売り飛ばそうと思ったのだけど」

『本当に悪趣味』

「み、ミゼン……何で……」

『貴方に答える義理はない』

妃季を抱えた莉汰はAに寄り添う。
霞はその光景に目を細めて、フッと鼻で笑った。

「不良品(ジャンク)の肩を持つか、莉汰」

「この人は不良品(ジャンク)じゃない!!」

Aの異能によって倒れた客。
慌てて出口に走り出す客。
電話を片手に叫ぶ客。

「【竹取物語】」

それらを一掃したのは輝夜の異能だった。
足下から身体を覆う雲の様な気体が客達の息を奪ったのだ。

『っ……!?』

「輝夜!!」

「うっせぇ、黙れよ糞猫」

「異能力【人不非(ヒトニアラズ)】!!」

自分の手を噛んだ莉汰の指先から血が迸り、霞の頬を掠り、切った。
それを見た浅葱は兄を庇いながら少し下がった。

「全部殺すと浅葱御兄様の戦力になっちゃうのに……」

かと云って、妃季の貴重な異能を使わせるわけにも行かなかった。