観覧車から見下ろして。Q.【文豪ストレイドッグス】 (ページ34)

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Qes,33_伝播する叫声ページ34

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競売日当日、午後六時頃。
Aの周りの檻では泣き叫ぶ人達がいた。
助けてくれ、出してくれ。

そんなの、意味が無いのに。
Aはお腹空いたなぁと思いながら、それらの叫びを聞き流していた。

その時、檻の入口側の布が退かされた。

「食事です。トイレとかは…………え?」

『……莉汰?』

「みみみみみ、ミゼン!? わっ、あ、えっと、その!」

『落ち着いて』

軽食を持って檻を覗いて来たのは準幹部の莉汰だった。
Aはが口元に人差し指を当て「しーっ」と云うと、莉汰は慌てて口を押さえてコクコクと縦に頷いた。

「な、何で……貴女が此処に?」

『夜中に注射をぷっすりと』

「はぁ～……末端に軽い情報だけでも入れていれば。ごめん、でも、今は此処から出せないや」

『いい』

莉汰はAの話など耳に入っておらず、少し考える素振りを見せてにっこりと笑った。

「……でも、待ってて。逃がしてあげる」

『ねえ、莉汰』

「なぁに」

『……やっぱ何でもない』

「……そっか。でも、ボクは貴女を助けるから」

「約束!」と云って行ってしまった莉汰。

檻の中に置かれたのは二種類のサンドウィッチ。手枷にはそこそこの長さがある為、辛うじて食べる事は出来そうだった。

『……うわ最悪。芥子(からし)マヨネーズだ』

しかし、今食べないと空腹で腹が捩れそうだった為、それを仕方無く食すのであった。

一方、外部別動隊。
太宰率いる外部待機班、潜入の千足。

「仮面を着けるのが服装規定(ドレスコード)か」

「俺、黒猫だから逆を行って白猫にしたんだ」

「なぁ、顔割れてンのにバレねェか?」

「中也君。俺は諜報員だよ? 舐めて貰っちゃ困る」

「お、おう……」

黒いスーツに濃紺のシャツ。
上着の内側には拳銃嚢(ホルスター)に入ったデザートイーグル。
片手には白猫を模した上部だけの半仮面があった。

「ま、戦闘は避けられないし、気休めだよ」

「……結構余裕そうじゃないか」

「兄妹喧嘩の延長戦、って思えば少しはね」

会場には代理参加者も居る為、端末や無線の持ち込みが許されていたのが幸いだった。

会場にて連絡を取るのは勿論、森だ。

「……Aの野郎、落ち着いてンのか」

「今のところは」

心配が、杞憂で終わればいいのだが。