Qes,25_鮮血の紲 ページ26
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九十九家のとある一室――
ソファに座り、読書をする浅葱の膝を枕にして、苦しそうに乱れた呼吸をする莉汰。
「ふーっ……ふぅーっ……うぅ……」
「発作、か。如何する、部屋に繋ぐ?」
「お、にいさ、ま……辛いぃ……!」
「……仕方無いか。でも今、誰も居ないし僕だけだけど」
「誰でも良い……!」
浅葱は持っていた本をパタリと閉じて机に置いた。
そして、自分の指を血が出る程に噛んでいる莉汰を自分の膝の上に跨がらせる様に抱き上げると、ワイシャツを少し肌蹴させて彼の頭を首に寄せた。
「量には気を付けて。あんま痛くするなよ」
「ん……」
ピリッと浅葱の首筋に痛みが走り、顔を顰める。
傷口から漏れ出した鮮血がシャツを赤く染め、莉汰の乱れた息は少しずつ治まって行った。
「っ……はぁ」
「もういい?」
「うん……ありがと、浅葱御兄様」
「塞がった?」
「大丈夫」
顔を上げた莉汰の口からは血液が溢れていた。
浅葱はそれを親指で拭ってやると彼の口へ向けた。
「残り。舐めとけ」
「ん……」
血を舐め取った莉汰は満足そうにニコリと笑うと、途端に何処かへ行ってしまったが、戻って来た時には浅葱の着替えを手にしていた。
「それ、洗うね」
「さんきゅ」
「ううん、此方こそありがと。御兄様」
部屋を出ようとした莉汰と入れ違いで部屋に入って来たのは不貞腐れた顔の輝夜だった。
輝夜は自分の横を通って行った顔色の良い莉汰、少し怠そうな浅葱を一瞥すると冷蔵庫へ足を向け、ブルーベリージュースのパックを投げた。
「飲んで寝とけ」
「あはは、良く分かったね」
「……血付いてんぞ」
「え、何処」
「首」
輝夜は自分の首をトントンと指差して、浅葱の隣に腰を下ろし、端末を手に取った。
「はぁ!?」
「……ご丁寧にハート描かれてる」
「莉汰の奴、いつの間に……」
「この前、俺もそれやられた。傷塞ぐ時に描いてるらしい」
「何やってるのあの子……」
浅葱は呆れたように溜息を吐き、輝夜から渡されたジュースにストローを差す。
隣に居る輝夜の端末には
「うわ、懐かしい。コッペリアじゃん」
「お前、これどう思う」
「どう、って……綺麗だなぁ? ぐらいだけど」
「論点其処じゃねぇ」
「はぁ?」
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管理番号:K2513-无-〇二四二
異能力【万華鏡(バンカキョウ)】通称“百目鬼”の使用する千里眼類似異能力。“殺人千里眼”とも呼ばれる非常に危険な異能である。また、継続した長時間使用の副作用として目の痛みや発熱、一時的な視力低下・失明を招く場合がある
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作者名:綺弌 | 作成日時:2019年1月27日 1時