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Qes,24_紫煙混じりの溜息 ページ25

(Side,千足)


良く出来た子だ。
流石、森さんの教え子と云ったところだろうか。
人の急所を狙って言葉を投げ掛けてくる。




「あの立場を捨ててまで此処に来る理由が判らない」


「そりゃあ何時まで経っても判らないだろうね。治君は俺ではないし、()してや思考を覗ける訳でも無い」


「それは……そうだけど」


「……そろそろお腹の探り合いは充分かな? 君のその頭脳は称賛されるべき特別な物だけど、互いとの線引きというものを覚えた方が身の為だ」




俺がそう云うと、彼は目を見開いてそのまま黙った。

背中で眠るAをおぶり直すと、衣嚢(ポケット)から煙草を取り出し咥え、火を付けた。




「ふぅ……」


「……ごめん」


「気にしないで」


「Aちゃん、私が抱えようか?」


「あー、お願いしてもいい?」


「うん」




治君はそっとAを抱え直すと、俺の隣に並んだ。
そして、此方をジッと見てくる。

俺は紫煙を吐いて彼の方へ目を向けた。




「なぁに?」


「絵になるね」


「あはは、お世辞をどうも」


「あのさ……親が居るってどんな感じ」


「は……?」




唐突にそう聞かれて思わず「は?」しか出て来なかった。
はくはくと言葉の出てこない自分の口。

否、少し落ち着け俺。
別にどうって事の無い、少年からの質問だろう。




「俺も分かんない。それが本音かなぁ……。ろくな親父じゃないのだけは慥かだけど」


「母親は?」


「生憎知らない。あの兄妹で母親知ってるのは多分、……霞ぐらいじゃないかな。彼奴、母親殺したんだ」


「え゛っ」


「理由もさっぱり判らず仕舞いだったんだよ。親父も親父で何にも云わなかったし、叱りもしなかった」




霞が母親を殺したのは確か……十五歳の時だった。俺は彼奴より二つ年下だから十三歳。
その時は既にマフィアで諜報の仕事に就いて居たっけ。

浅葱が俺をつけていて、すれ違い様に引き留められた。

――こんな所でごめん、千足にぃ。ちょっとだけいい?

その話を聞いた時は驚いた。
真逆、そんな事になっていようとは。




「親って云うのは無責任。それが俺的結論かな」


「ふぅん」


「参考にしてはいけないよ治君」


「妙に説得力あるのだけど」


「……街中で家族連れを探してご覧。素敵な家族もいるよ」




……俺は、君とは敵対したくないかな。
何だか弟みたいで、そう見えてしまって____。

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管理番号:K2513-无-〇二四二

異能力【万華鏡(バンカキョウ)】通称“百目鬼”の使用する千里眼類似異能力。“殺人千里眼”とも呼ばれる非常に危険な異能である。また、継続した長時間使用の副作用として目の痛みや発熱、一時的な視力低下・失明を招く場合がある


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設定タグ:文豪ストレイドッグス , ポートマフィア , 黒の時代   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:綺弌 | 作成日時:2019年1月27日 1時

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