観覧車から見下ろして。Q.【文豪ストレイドッグス】 (ページ19)

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Qes,18_変化する命ページ19

(Side,太宰)

Aちゃんが私の手を強く握り締めた途端、何かがあったのか辺りが酷くざわめいた。
どうしたのだろうか、様子を見に行くか、そう思案していた時、彼女が大声で叫んだ。

『千足さん!!』

「えっ」

「A知り合いかよ」

彼女の顔を見ると驚愕の色に染まっていて、千足と呼ばれた青年と只ならぬ関係がある事が窺えた。

ザッと道が出来た先には倒れたその青年と、カサルティリオの幹部勢が揃っていた。

そして、首領である彼の姿も。

「莉汰。妃季の手を此方に」

「使うの……? 御父様」

「この様な形は不本意だ。いいから早くしなさい」

「分かった」

彼女が“リタ”と呼んでいた少年は赤子を青年に近付け、そのまま触れさせると紫色の光と共に文字列が奔った。

少し瞬きをした間に赤ん坊は居なくなっていて、其処には小さな少女が佇んでいた。

「……いたいいたい。しにたくない。そうね、妃季にきこえてくるの」

「妃季。御兄様を」

「うん! ……異能力【死寂なる生命(しじゃくなるいのち)】」

彼女は辿々しくそう云うと青年の傷に手を翳した。
すると、時間が巻き戻るように出血も傷も無くなり、最後に突き刺さっていた小刀がカランと抜けた。

「千足にーに。おやすみ、な、さい……」

文字列が弾けた途端に少女は赤子に戻っていた。
Aは青年に駆け寄り、強く抱き締めた。

『千足さん……』

「……行きなさい。今回は咎めない」

『許さないから……輝夜』

「勝手にほざいてろ」

『……千足さん。私このままじゃ運べないよ』

Aちゃんが幹部達を睨み付ける目は、何時にも増して鋭くて、それこそ殺してしまいそうだった。

倒れたままの青年の頬を優しく撫でると、彼を包むように金色の文字列が広がり、其処には見慣れたあの小さな黒猫のテオ君が居た。

「嗚呼……成程。そういう原理だったのか」

「テオの正体が、あの男……なのか?」

「多分ね」

『ごめんなさい。太宰さん、中原さん』

「いいよ。早く撤退しよう」

傷は癒えたとはいえ、痛覚は残っているらしく、少し苦しそうに呼吸をする仔猫。
若しかして、彼女が一歳半だと云うのに少し考えたのは人間の歳で換算していたからなのだろうか。
そうなら彼は二十歳前後になる……?

「……千足御兄様。A、御姉様」

その声は私には聞こえていなかった。