Qes,14_冥契の片鱗 ページ15
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Aの足は太宰によって治療が施され、その最中に目隠しも元に戻されていた。
白いブラウスに黒いビスチェコルセット、そしてランダムに襞が付いた黒いスカート。森から贈られたロングケープコートを纏っていた。
「お嬢様?」
『これは全部、森さんの趣味です。私を着せ替え人形か何かと勘違いしています』
「エリス嬢と気が合いそうだよ、君」
『あぁ……慥かにお話した時は楽しかったです』
「矢っ張り……。まぁいいや。さ、行こうか。これから私の仕事なんだ」
Aはその言葉にキョトンとする。
太宰は彼女に愛用する狙撃銃の箱を持たせ、ニッコリと笑って見せた。
「許可も出てるから、ね?」
『少し待って貰えませんか。テオを呼び戻します』
「呼べるのかい?」
『勿論』
Aが左手を耳を覆うように置いて、少し俯く。そして、数十秒して顔を上げた。
『下で拾います』
「何やったの今」
『内緒です』
「えぇ? 教えて呉れ給えよ〜」
狙撃銃を抱えたAは太宰と共に階下へ降りると、其処にはテオがちょこんと座って待っていた。
『テオ!』
「みゃー」
「君の相棒も拾った事だし、行こっか」
『はい』
黒塗りの車に乗り込み、しばらくしてからAは気付いた。何の任務か聞いていない。
狙撃銃を持たされて来たが何をするか聞いていない。
『あの、太宰さん?』
「ん、なぁに?」
『この任務って何を……? 殺しですか?』
「違う違う。ちょっと潜入」
『何処に、ですか』
「旧九十九財閥主催の招宴だよ。中也とは現場で落ち合う」
『なっ……』
Aが動揺した事で太宰が口角を上げているのを、テオはジッと太宰の鳶色の隻眼を鋭く見詰めていた。
「何か
『そんな重要な任務、森さんの許可が……』
「うん、そうだね。だからこの潜入任務なら、君を連れて行けばいいよって首領が云ったのだよ。若しかして、命令に背くつもりかい?」
太宰の瞳の温度が酷く下がる。
Aはピクリと肩を跳ねさせ、首を横に振った。太宰はそれにニコリと笑うと、彼女の頭を撫でた。
「大丈夫さ。私がサポートするよ」
『……太宰さん、彼処は魔の巣窟ですよ』
「何となく首領から危険な事は聞いたから知っているよ」
否、何も知らない。
Aはそう思いながら窓の外へ目を向けるのだった。
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管理番号:K2513-无-〇二四二
異能力【万華鏡(バンカキョウ)】通称“百目鬼”の使用する千里眼類似異能力。“殺人千里眼”とも呼ばれる非常に危険な異能である。また、継続した長時間使用の副作用として目の痛みや発熱、一時的な視力低下・失明を招く場合がある
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作者名:綺弌 | 作成日時:2019年1月27日 1時