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Qes,01_悪夢の序曲 ページ2

(Side,太宰)


長外套を翻して訪れたのは横浜市内の高層マンション。入口で呼鈴を押せば、部屋の主が鍵を開けてくれた。




「ねぇ」


――『……何ですか』


「私、誰とも名乗っていないのに、すんなりと鍵を開けるなんて無用心過ぎないかい?」


――『何を今更。視えているので問題ありません』




会話が途切れたところで扉が開き、部屋の主が出迎えてくれた。

目許を黒布で覆った女の子。
この風変わりな女の子も実は裏社会の人間だ。




『ようこそ、太宰さん』


「本当に視えているのだねぇ」


『視えますよ。貴方が何処に居ようと、地獄の果てでも』


「その云い方、少し怖いね」


『……いいから入るなら早く入って下さい』




この子に対して大抵の秘密は通用しない。
異能によって行動を視られている事があるからだ。




『ご飯って、食べましたか』


「作ってくれるの?」


『余りで良ければ出します』


「じゃあ、お願いするよ」


『お風呂行ってて下さい。その間に用意します』




彼女曰く(・・)、十五歳らしいが随分と大人びている。
親兄弟の話も聞いた事が無ければ、何処かに所属しているというそんな話も聞いた事が無い。

彼女の名前は百目鬼(ドウメキ)さん。初対面の時、早々に「偽名です」と云われた。“ミゼン”と名乗る時もあって、色々偽名がある。

一番使っているのは“フェリス=ウィール”という偽名だ。英語にすればFerris wheel。
あまり耳に馴染みの無いものだが、観覧車という意味になる。




『着替え、置いておきますね』


「あ、うん」




彼女は声音で相手を探り、測る。
直接的な視覚を奪う代わりに耳が良いらしい。

居間に向かえば、彼女は仕事をしているらしかった。




『もう終わるので、食べてて下さい』


「頂きます」




その電話口からは銃声が聞こえる。
相手は抗争の現場にでも居るのだろうか。




『後方百(メートル)に注意を。それから南西側、第二搬入口崩壊』




恐らく、彼女はこの電話の相手を助ける心算は無い。最初から消し去る手筈で居たのだろう。
別の端末を右手で弄り、伝言を飛ばしている相手が依頼主だ。




『……何ですか』


「終わったの?」


『えぇ、滞り無く。太宰さんは今日、何かあったんですか』


「うーん、少しだけ」


『そうですか。大変ですね』




そう云った彼女は少しだけ退屈そうだった。

Qes,02_隠され続けた秘密→←Qes,00_In the first Twilight.


管理番号:K2513-无-〇二四二

異能力【万華鏡(バンカキョウ)】通称“百目鬼”の使用する千里眼類似異能力。“殺人千里眼”とも呼ばれる非常に危険な異能である。また、継続した長時間使用の副作用として目の痛みや発熱、一時的な視力低下・失明を招く場合がある


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設定タグ:文豪ストレイドッグス , ポートマフィア , 黒の時代   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:綺弌 | 作成日時:2019年1月27日 1時

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