Qes,01_悪夢の序曲 ページ2
(Side,太宰)
長外套を翻して訪れたのは横浜市内の高層マンション。入口で呼鈴を押せば、部屋の主が鍵を開けてくれた。
「ねぇ」
――『……何ですか』
「私、誰とも名乗っていないのに、すんなりと鍵を開けるなんて無用心過ぎないかい?」
――『何を今更。視えているので問題ありません』
会話が途切れたところで扉が開き、部屋の主が出迎えてくれた。
目許を黒布で覆った女の子。
この風変わりな女の子も実は裏社会の人間だ。
『ようこそ、太宰さん』
「本当に視えているのだねぇ」
『視えますよ。貴方が何処に居ようと、地獄の果てでも』
「その云い方、少し怖いね」
『……いいから入るなら早く入って下さい』
この子に対して大抵の秘密は通用しない。
異能によって行動を視られている事があるからだ。
『ご飯って、食べましたか』
「作ってくれるの?」
『余りで良ければ出します』
「じゃあ、お願いするよ」
『お風呂行ってて下さい。その間に用意します』
彼女
親兄弟の話も聞いた事が無ければ、何処かに所属しているというそんな話も聞いた事が無い。
彼女の名前は
一番使っているのは“フェリス=ウィール”という偽名だ。英語にすればFerris wheel。
あまり耳に馴染みの無いものだが、観覧車という意味になる。
『着替え、置いておきますね』
「あ、うん」
彼女は声音で相手を探り、測る。
直接的な視覚を奪う代わりに耳が良いらしい。
居間に向かえば、彼女は仕事をしているらしかった。
『もう終わるので、食べてて下さい』
「頂きます」
その電話口からは銃声が聞こえる。
相手は抗争の現場にでも居るのだろうか。
『後方百
恐らく、彼女はこの電話の相手を助ける心算は無い。最初から消し去る手筈で居たのだろう。
別の端末を右手で弄り、伝言を飛ばしている相手が依頼主だ。
『……何ですか』
「終わったの?」
『えぇ、滞り無く。太宰さんは今日、何かあったんですか』
「うーん、少しだけ」
『そうですか。大変ですね』
そう云った彼女は少しだけ退屈そうだった。
Qes,02_隠され続けた秘密→←Qes,00_In the first Twilight.
管理番号:K2513-无-〇二四二
異能力【万華鏡(バンカキョウ)】通称“百目鬼”の使用する千里眼類似異能力。“殺人千里眼”とも呼ばれる非常に危険な異能である。また、継続した長時間使用の副作用として目の痛みや発熱、一時的な視力低下・失明を招く場合がある
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作者名:綺弌 | 作成日時:2019年1月27日 1時