Qes,00_In the first Twilight. ページ1
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嘗て、ポートマフィアの地下牢には、とある異能者が厳重に隔離され、飼われていた。
だが、ある日を境にその姿は忽然と消え、先代首領はその者を見届けた後に息絶えた。
横浜市街――
夜も更け、光がきらびやかに点り始める頃。
「エリス嬢。そろそろ首領の所に戻らないと……」
「厭よ、チュウヤ。あともう少し!」
その時、彼等の目の前を勢いよく通り過ぎた影があった。ドン、という鈍い音を立てて壁伝いに座り込む少女。
背中を強く打ち付けたらしく、その顔は酷い痛みに歪み、嗚咽を漏らしていた。
市街というのもあり、辺りではざわめきが起こる。
「おい、お前大丈夫か____」
「見付けた」
『っ……』
少女に近寄る胡桃色の髪を揺らす青年。
黒や金の目立つ和装を着崩し、洋装と合わせた格好だ。
すると何時の間にか、踞る少女の前にはエリスと呼ばれていた幼女が立ちはだかっていたのだ。
「誰だよ。部外者は其処退いて貰いたいんだけど」
「嫌よ。女の子を虐めるのは善くないわ」
「俺等の
青年がエリスの腕を掴んだ瞬間、彼の頬を小刀が素早く掠った。
ツツゥ……と垂れる血を拭った青年は、小刀を振るった張本人である男性を一瞥した。
「切れたんだけど……ねぇ、お兄サン」
「エリス嬢から手を離しやがれ」
「事と次第による」
『……か、……ぐ、や』
「あ?」
青年が少女へ目を向けた途端、彼は両目を手で押さえて悶え始めたのだ。
「あ゛あああああああああ」
「お前、こっち来い……!」
男性に手を引かれ、黒塗り車に乗せられた少女。
首には首枷で付いたであろう古傷。身体中に幾つもの傷が付いていた。
「大丈夫か?」
『すみま、せん……』
「いい、謝ンな」
『……そう、ですか』
黒塗りの車が現場から少し離れ始めた頃、少女の目にはポートマフィアビルが映った。
その途端、少女の顔の血の気が引いた。
『っ……!』
「如何かしたか」
『いえ』
「ねぇ、貴女……名前は?」
『……“
その異様な名前。
男性はその名前を記憶の中のものと照らし合わせていた。
「……なぁ、前に何処かで____」
『気の所為、かと』
暗闇が飽和する頃、痛みは霧散するだろう____。
管理番号:K2513-无-〇二四二
異能力【万華鏡(バンカキョウ)】通称“百目鬼”の使用する千里眼類似異能力。“殺人千里眼”とも呼ばれる非常に危険な異能である。また、継続した長時間使用の副作用として目の痛みや発熱、一時的な視力低下・失明を招く場合がある
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作者名:綺弌 | 作成日時:2019年1月27日 1時