23 ページ23
俺はそう言うと、ゾムさんの隣を横切る。
返答なんて要らない。俺にはもう言える事は無い。
小動物達に何かあったらひとらんらんさんに怒られてしまう。
「(信じて欲しい、なんて我儘だ)」
足取りが重くなるのは、仕方ないと思う。
暗殺部隊隊長の、弱めていても尚鋭い殺気を受けたんだ。
しかも、関わりはしなかったもののその強さに憧れていた俺。
…憧れている人からの仲間否定は辛いぜ、ウン。
俺に何も言わず、動く気配すらないゾムさんを確認する。
…正直、素直な人だなぁ、と思った。
警戒心を隠さず真正面から来るなんて、狡賢い大人はしない。
隠し事には向いてなさそうだな。思った事直ぐ出そう。出てたわ。
まぁ、それがこの人の良い所でもあり、悪い所でもあると。
…さっさと戻ってブラブラするかぁ。
それが疑われるんだよ。
そう一人、心の中でくだらない漫才をして。
ひとらんらんさんの元へ走った。
─────
「お疲れ様」
そう言って渡されたのは、洗われたプチトマト。
それを見てキョトンとしていたのだろう、俺の方を見て、
手伝ってくれて有難う、と笑うひとらんらんさん。
_____なんだ貴方は。天使か?
先程まで荒んでいた心を浄化するように笑う彼が、
ソワソワしているのに気付いて、プチトマトを頬張る。
「ぅ、っっんま…!!」
街に売られているプチトマトとは全然違う。
なんて言ったら良いんだ?あの、トマトの味が濃くて、こう…!!
「喜んでくれて良かった。疲れてるみたいだったから」
「う……有難うございます、ひとらんらんさん」
言葉に言い表せない事を見越したのか、それでも嬉しそうに笑ってくれるひとらんらんさん。疲れてる事に気付いて態々とか、ほんと良い人だな…。
気遣いの出来る上司が居るほど嬉しいことは無い。
…いや案外あるけど。
「それじゃあひとらんらんさん、また!」
「うん。またね、A君!」
___暫くそのままプチトマトを堪能していれば、
遂に無くなったので、手を洗い立ち上がる。
手伝いも終わったし帰るか。
第二訓練場へと向かうひとらんらんさんと道を分かれては、
また俺は軍内を歩く。
「(レオが来るまでまだまだ時間あるな、どこ行こ)」
訓練がない日は暇だなと滅茶苦茶思う。
…休みを貰っても内ゲバで暴れる彼等の気持ちが、
ちょっとだけわかった気がした。
.
(「…ゾムがごめんね、A君」)
755人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
kenma(プロフ) - 好き過ぎる…いつまでも更新待ってます! (8月15日 12時) (レス) @page49 id: 23621c8f5e (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺(プロフ) - 大好きです!!また更新されることを願っています! (2022年5月5日 18時) (レス) id: 85717083f6 (このIDを非表示/違反報告)
さすらいの村人B - くぅ.....続きが気になり申す、、、 (2021年12月20日 9時) (レス) @page49 id: 38e13adc7f (このIDを非表示/違反報告)
クルイ@SOS同盟 - あ、好きです...頑張って下さい! (2021年5月10日 22時) (レス) id: 6c77753d41 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠の芽-にゃお(プロフ) - なにこれ神ですか!?!?!?一気見してこの時間になってしまいました、、、、さいこうですぅうぅつう!!!!! (2021年2月3日 3時) (レス) id: b4d2a08102 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ショイ太郎 | 作成日時:2020年5月29日 8時