☀ただ単純で ページ19
子どもが社会人になってからする親の習性のひとつに、仕送りがある。一人暮らしをしている子どもへの最低限の愛情と繋ぎ目。うちの母親は厚かましいほどに海外旅行の土産を包みに入れてくるけど、その中にあると逆に目立つ地味なタッパーに入ってるトッポギ。どちらかといえばそっちのほうが楽しみだからそれだけでいいのだけれど、それを言うと変に拗ねてしまう人だから言わないでおいている。
《え、え、なに。めーっちゃいい匂い、ヤバい》
HC「こわ、おばけじゃん」
《ひど》
自分にとってはトッポギの匂いよりも、風呂上がりのシャンプーとか素の匂いを纏ってるほうがヤバいから。
髪色と綺麗なコントラストになっている真っ黒のパックを、ぺたぺた触りながら離れていくスアに向かって、小さくため息をつく。ひどいのはそっちで、急に声が聞こえて振り向くといたと思えば警戒心ゼロの格好に誘うような匂いで、距離は数センチしか離れていない。
意識もされていないんだろうな。じゃなくて、あれなんだったら今までどうして誰にも手を付けられてないワケ？不思議でしょうがないんだけど。いや、自分が知らないだけであったんだろうか。
顔も知らないいるのかもわからない不特定の対象に嫉妬心を募らせていると、どこかでだれかの腹の虫がなる音がする。だれかといってもこの空間には自分と、あともう一人しかいないわけで。
《やだー、お腹すいてんの？》
HC「白々しいぞ」
《バレたか。恥ずかしいじゃん。お腹すいた》
そう言ってる彼女は、いつのまにか真っ黒のパックを外して、水っぽい肌を見せている。
素直なのかそうじゃないのか分からない。お見合いを仮病してバックレて、母親の七つ道具である仕送りを利用して口実を見つけるほど、自分は馬鹿だけど。一応、それ以外で親孝行はしているつもりだから許してほしい。
温めたトッポギを皿の上に乗せて、テーブルのまえで今か今かと待ちわびているスアの前に出す。一口食べて、「んー！」と言いながらきらきらした瞳をこちらに向けられて、かわいいなんて思ってしまうほど自分は単純だったとは。
《作ったの？》
HC「母さんがね」
《へえ、食べるんだこういうのも》
HC「おいしい？」
《うん、ありがとう。けど私なんかに時間割いてていいの？忙しくない？》
HC「ばーか、暇だからきてんの」
違う。たまたま時間が空いたから会いたいと思うほどに、馬鹿なのはこっち。
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きぬど(プロフ) - yoroseさん» ありがとうございます！遅筆ですがよろしくです☺️ (10月17日 18時) (
レス) id: 64123585f5 (このIDを非表示/違反報告)
yorose(プロフ) - スピンオフ待ってました！！ (10月16日 13時) (レス) @page1 id: ea5756c655 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きぬど
| 作成日時：2023年10月15日 17時
