第二百九十四訓 ページ2
声が震える。
『んで、何でお前が、』
体が震える。
後退り、尻餅をつきそうになった。
私の様子がおかしい事に気付いたのだろう、総悟達が心配そうな目線を送ってくる。
「久し振りだなァA。大きくなっていて父さん嬉しいぞ、別嬪になったじゃないか」
墨でもぶちまけたみたいに真っ黒な髪、血のような赤い瞳。受け継いだ色は無いが実父である。偽物のわけが無い。
卑らしく笑ったその笑顔に鳥肌が立ち「父さん」という言葉に冷や汗が流れる……この嫌悪感、間違いなく本物。娘になりたいと願ったことなど無いが。
『お前を父だと思った事なんて今までで一度も無い……今すぐ帰れ…!!』
睨んで父に叫ぶ。
ヘラヘラした私しか見た事の無いからか、驚いている近藤さんと総悟、トシが視界に移った。
土方「待て、お前の父親なんだろ?」
『……随分前に…言いましたよね、私は捨てられたと。私はコイツの娘じゃない』
コイツの娘になぞなってたまる物か。
「酷いじゃないか、たった一人の家族なのに」
『どの口が……!!母さんだって、お前が殺したようなモンだろ!!』
ギリッと奥歯を噛み締めると、
近藤「まァまァ、Aちゃんも色々混乱しているんだろう、一回落ち着きなさい!」
雰囲気を察したのであろう、近藤さんが間に入ってきて私を宥める。
『……すいま、せん…近藤さん』
一度落ち着いて父を見つめる。父は依然としてニコニコしたままで。
「…………また来るからな」
そう言い残して屯所を出ていった。嗚呼、嗚呼、不快だ。二度と来るな。
______ガララ……、トン。
襖が、閉まる。
その瞬間、私は全身の力が抜けてベタリとその場に座り込んでしまった。
沖田「……大丈夫ですかィ?」
ドSな筈の総悟が駆け寄り、背中をさすって心配してくれている。あー、泣きそう。
……心配、かけてしまったかな?でも迷惑をかける訳にはいかないしなァ…
『…別に』
土方「あんだけ荒んでて何もないってのは無ェだろ、聞かせろ」
『うぐ、』
誤魔化そうとしたが一瞬で一蹴された。悲し。
はァ…まァいつかは言わなければいけなかったのだし…
『………分かり、ました。話します…父の事。』
私は、過去の事を話し始めた。
『……まず、あの男。あの男の名は暁 司欧…まァ今の苗字は知りませんが。一応…父親、です』
ずっと清算できなかった、
両親の話を。
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トめAと@とめぇーとぉーの精霊:カド松さん:(プロフ) - すごい・・・・・私比較的地雷が多いけれど全く地雷に触れてない・・・・・ここまでおもしろいと思ったのには初めてであいました・・・・・!オリキャラとかもよく殺意がわくけど有君とかぜんぜん腹立たないというかもっとやってくれって思うっていうかもう最高です! (2022年3月30日 6時) (レス) @page34 id: 8b7bdbc23e (このIDを非表示/違反報告)
実珠(プロフ) - 阿呆代表の神さん» すみません、全部知らない……本当にごめんなさいアニメ知識不足で……!!代わりと言っては何ですが他のもののリクエストもっとください!本当にごめんなさい……!!! (2021年5月27日 17時) (レス) id: 5eb1e7fab0 (このIDを非表示/違反報告)
阿呆代表の神(プロフ) - もう銀魂が他の作品に侵食されつつあるの草。あの、もしまだやってなくて知ってるのなら、スケットダンス、ムヒョロジ、ボーボボ、ハガレン(これに至ってはもうジャンプじゃない)…この中でひとつでも良いので、知ってるものがあれば番外編でやって欲しいです…… (2021年5月26日 3時) (レス) id: 10eaece567 (このIDを非表示/違反報告)
実珠(プロフ) - 雲隠れさん» ま、マジですか!?有難う御座います……!感動して頂けるなんて凄く嬉しいです!!これからも頑張ります!!! (2021年5月11日 7時) (レス) id: 5eb1e7fab0 (このIDを非表示/違反報告)
雲隠れ - 泣きました。凄く感動しましたっっ! この小説最高過ぎます…。ヒロインかわいいし面白いし、とにかく最高なので何回も読み返させていただいています。これからも頑張ってください! (2021年5月10日 23時) (レス) id: 9c937fba5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:実珠 | 作成日時:2020年12月14日 23時