episode 5 ページ17
叶汰side
大切な──くそ、あんなに大事に抱えておきながら──!!
忘れさせられた何かを必死に思い出そうとしても、あまりに記憶が曖昧過ぎて思い出すどころか何を忘れたのかすら分からなくなってくる。
ここまで不安になるとは思わなかったが、ここまで思い出せないとさすがに何かしらの手がかりが欲しい。一度踏ん切りをつけて今は諦める事にした。
「なぁ叶汰」
「……上司ともあろう死神に下の名前で呼ばれるの嫌なんすけど」
「堅苦しく夏目って呼ぶか？」
形はかなり違えど、死神というものは命を扱う仕事だというイメージがある。もう少し厳しいのかと思っていたが、目の前で椅子に座って外を眺める上司は、同じ室内に誰がいようとお構い無しでタバコを吸っている。そしてその表情は一つの事務所を構えるキャリアの持ち主とは思えない程に柔らかい。
「好きにしてもらって構わないですけど……あの先輩はどうして完全な死神じゃない状態で存在してるんすか」
「じゃあ叶汰でいいな。……暁人はなぁ、強制的に死神として覚醒させられたから、本人が人間でありたいって強く願ってるうちはどっちつかずで不安定だ」
──強制的に死神に覚醒「させられた」？
言い方に違和感を覚えたが、同時に彼は覚醒した瞬間に首元を酷く痛がっていた事を思い出す。
自然に覚醒する時、紋様が浮かび上がっても痛みは一切無いと聞いたし、自分も紋様が浮かんでいた事など「覚醒した」と言われるまで気付きもしなかった。
という事は──
「お前頭良いからな、何となく察しただろうが……その先はダメだ」
「はぁ……？」
「あと叶汰、お前の初めての依頼は暁人と一緒に行く訳だが、案の定小夏から伝言が来た。明後日に変更な」
ちょっと詰め込み過ぎたなーと再び書類に目を通し始めた上司を前に戸惑っていると、ずっとソファーで眠っていた黒猫が目を覚ました。
じっと見つめられ、思わず顔を背ける。
猫の鋭い目は、まるで空っぽな自分を見透かされているような錯覚に陥るから苦手だ。
『初対面で顔を背けるなんて失礼な。僕は君をサポートする猫だっていうのに』
「喋った!?」
「あぁ……そいつな、叶汰と一緒に色々やってくれる猫。名前は各々で付けることになってるから、お前も何か付けてやれよ」
喋った、と言うよりは頭の中に語りかけて来るような……？
奇妙な感覚になりながら、上司の部屋に居座り続けるのは失礼だと思い、用意された部屋へ猫と一緒に戻った。
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シャル＠如月唯奈(プロフ) - ハジメマシテ！ULOGから来ました、シャルといいます。小説めちゃめちゃ面白かったです！文章の書き方とか世界観とかめちゃめちゃ好みで、ドンドン読んじゃいました(笑)これからも頑張ってください、応援してます！ (2020年1月18日 22時) (
レス) id: 6e2bf13c08 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：天楽 | 作者ホームページ：
作成日時：2019年6月25日 23時
