Story 20 ページ20
床に散るガラスを踏みしめ、歩を進めると止まる彼女達の瞳には、包帯の男の姿が映る
一人は何も変わらずに、一人は嬉しげに
その男を見つめた。それに気づいてか彼女達を男もまた見返す、そこには興味が浮かんでいて先刻Aに見せたような狂気じみたようなモノではなく純粋な興味
「あ?また手前かよ……んなことより
おい、このエレベーターを開けたのはお前か?」
「……うん、そう」
そんな二人を視界に入れると男は嬉しげに、楽しげにそう笑う
それは歓喜だ。自分の代わりの頭が出来たことについての
それは希望だ。出れるかもしれない、そんな思いが込められてる
「そうか、お前か!
なぁ、お前、さっき殺してほしいって俺に言ったよなぁ?」
「……言った」
「俺、バカなんだよ。だから、さ……一緒にここを出る手助けをしてくれよ」
Aは口には何も出さないで、レイと男の会話を聞いていた
先程レイチェルと交わした約束を思い返し、
自分だけじゃなくて、こっちのアイザックにも頼んでたということに気付き
内心不満が募っていく
不快、だよね
頼むのはそいつ次第だし、誰でもいいって思ってるかもしれないんだけど
誰でもいいって、使われてる感じがするよな?こっちの考えすぎだとは思うんだけど
気分が悪いとでも言いたげに、頭を掻く彼女のことに気付かずに男は話を続ける
「そんでもって、外に出ればお前もちったぁ良い顔するかもしれねぇだろ。そしたら、お前を……
──お前を、殺してやるよ」
彼女も交わした、似たような約束。全体的に似てる内容
お互いを使い合うそんな約束
端から見れば異常な会話にしか聞こえないだろう。けれども、彼女を含めたこの場にいる三人には 少しだけ 変としか思えないようだった、
異様で異常、けど少し変なだけ
小さく彼女が漏らした言葉は変なものだ、殺してもらう殺してやるの命を掛けた約束なんて傍からしたら狂っている。そうとしか思えないだろうから
だが、それでいいのだ
否、言葉にすることは無いが“それがいい”のかもしれない
なぜかといえば、ここがそういう場所なのだから
ここは殺意渦巻く場所、
人間の命を簡単に狩ることのできるようなゲームのようなところ
ルールを破らなければ問題ない
息をするみたいに殺しが出来るみたいな そんなところ
イカれた約束すら普通に感じられる。
9人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ