Floor B5 story1 ページ1
____チリン…チリン…
どこかでそんな音が聞こえた、なにか忘れてるものを呼び起こさせるようなそんな気さえさせる
忘れたいものを、の方が合ってる。嫌な記憶が頭を駆け巡る、嗚呼忌々しい、頭にへばりついて離れないこのクソみたいな記憶共は
まるで鎖みたいに付き纏い、自分を繋ぎとめてくる
嗚呼、ウザったい。全部ぶっ壊したくなる。
こうなったのも、全部全部アイツのせいだ
一人影はそう考えた。目覚めたのか閉じきっていた目が微かに震えてゆっくりと開かれる
しかし、その瞳はその場のものを写してはいない
憎しみのこもった目で何かを見つめていた。
「やぁ、起きたみたいだね?目の調子はどうだい、多分慣れない包帯なんて巻いてるから違和感とか感じるとは思うけど…痛く無いかい?」
それに気づいているのか、気づいていないのかそんな影に話しかける男性は彼女の顔の左半分を覆うように巻かれた包帯をするりと撫でた
しかし彼女はそれさえにも気づきはしない
アイツが自分にたくさんのものを寄越したから、自分は
アイツが約束なんてしたから、
アイツがそれを破ったりしたから、
アイツが、「ねぇ、大丈夫……?」
「…あ?」
微動だにしなかった者の頭の中に詰め込まれてた“鎖”が音を立てて、弾け散った
反応を示した彼女の目の前には青、それが彼女の瞳の黄を写してる。
その青は瞳で、その瞳を持つのは少女で、その少女は不思議そうに首をかしげてる
それを少し遅れて漸く理解し、それからまた少し経つと、今自分が置かれている状況を少し理解したようで
少女から目を逸らし、その隣に立っている男を一瞥して周りを見渡した
「嗚呼、良かった。呼びかけても反応がなかったから心配したよ…レイチェルもありがとう、どうしたんだい?A」
A、と呼ばれた女が座っているベットから見渡すその部屋は薄暗い。妙に狭い視界で辺りを見渡せば 光るパソコンに、棚。それしかないその部屋は、それだけなのに…いやそれだけだからかもしれない、どこかもの寂しい感じと不気味さを感じてしまう
名前を呼ばれたにも関わらず、一点を見つめた女__Aは自分が何故ここにいるか、なんの為にここにいるかを再認識し。引き結ばれていた唇が無意識か、故意かは本人にしか分からないが三日月のような弧を描いた。
『嗚呼、そうだった自分はここに____の為にいるんだ。』
そう、Aは呟いたように感じた
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