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初めて会ってからもう2年が過ぎた。


彼のことは組織には言っていない。

彼にも私が組織の人間であることは言っていない。


…だって怖くて。

今、私を仲間として見てくれるその瞳が罵る目に変わるのが怖いの。



だから、言わない…言えない。

いつか彼が私が悪の人間だと気づくまで、私は何もしない。



きっとそれは、私が死ぬまで続くと、そう思っていたのに。




「お前、その髪…!」



長年いることを考えると染めるよりウィッグの方が安全と考えたのが仇になった。

寝てる彼に毛布を掛けようとしたら、腕を掴まれ捻られた。
その時にウィッグを思いっきりずらした彼。



ああそうだ。

彼は寝てる時だって過敏だから、気をつけないとって思っていたのに。


寝ぼけた彼が部下を捻りあげるなんてよくあることだったのに。


彼の瞳が驚愕から敵を見る目へと変化していく。



やめて、そんな目で見ないで。


違う私はあなたの敵じゃない。

護ろうとしてきたの。
強いあなたには私の助けなんて不要なくらい、あなたは強かったけれど。

ねぇ…ねぇ降谷さん、違うの。信じて。



心の中は貴方の足に縋りついてるのに、現実の足も口もただの役立たずで。

ただ震えることしか出来ないの。



「銀髪…、お前、もしかして」


"私"の名前が呼ばれた。

彼の口から私の名前が出てきたことに驚いて肩が震える。
それは肯定を表してしまった。


彼が動いた刹那、銃口を目の前に向けられる。


黒く光るのを呆然と見つめながら、
ただ彼に黒は似合わないなぁ、なんて客観的に考えてる自分がいた。



劈くような音がして、私の左胸に風が通る。

息苦しくなって、痛くて熱くてその場に蹲る。


ヒュ、と左胸が呼吸をしようと足掻いて、でも出来なくて。蟻地獄みたいだった。



降谷さん、降谷さん、ねぇ聞いて。私の話。



私ね、あんな組織本当は嫌だったんだよ。

まだ16なのに好きなことも出来なくて。


お洒落とか学校で授業受けたりとか、友達と帰りに買い食いとかしてみたかった。



でも貴方に会えたから恋が出来たから。

バーボンの名前を知れたから。


この世界は、そう捨てたもんじゃないなって思えたの。

少し、世界が好きになったの。



ねぇ、私ね、あなたのことが______。




カチ、と頭の上で音がした。



「降谷さ____」

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鬱ネコ(プロフ) - あるとさん» ありがとうございます…!そんなもったいないお言葉…。ありがとうございます (2019年9月18日 22時) (レス) id: 61ffaa13af (このIDを非表示/違反報告)
あると(プロフ) - めちゃくちゃ好きです…。実はずっと好きだった夢主ちゃんと、愛してた事を気付かずに殺してしまった降谷さんの二人がどうしようもなく切なくて…。本当に素敵な作品です。 (2019年6月13日 16時) (レス) id: ea1d837737 (このIDを非表示/違反報告)
鬱ネコ(プロフ) - 紅蓮さん» ありがとうございます…!そんなふうに言ってもらえて本当に嬉しいです…! (2019年4月14日 17時) (レス) id: 61ffaa13af (このIDを非表示/違反報告)
紅蓮 - やばいですね。なんでか、ずっと涙が出るんです。涙が止まら無いんです。 (2019年2月18日 0時) (レス) id: 1d2a9694d8 (このIDを非表示/違反報告)
鬱ネコ(プロフ) - 雪さん» ありがとうございます~!嬉しいです! (2018年12月2日 9時) (レス) id: 61ffaa13af (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鬱ネコ | 作成日時:2018年11月23日 9時

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