【d!】八尺の歩幅【企画短編集】 (ページ23)

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【ut】可愛い子/ゆきみやページ23

突然だが俺には可愛い彼女がいる。

名前はA、種族は口裂け女。

出会いは街中。夜の暗い夜道にある街灯の下にその子はたっていた。マスクをつけて脅かす相手が来るのを待っていたらしいが、ここは夜の人通りが少ない住宅街だ。こんなところにずっとたってても人がこないことは一目瞭然だった。

ut｢あの、こんなところ人通らんと思うんですけど…｣

そう話しかけるとしゅんとしながら彼女は頭を下げ、そそくさとどっかへ行ってしまった。

ここまではあ、可愛い子やん。くらいの印象だった。今思えば所謂一目惚れだったのだろう。今でもあの街頭の下を通る度Aのことを思い出す。

それからの展開は早かった。飽きずに街灯の下に通い好きな食べ物、色、異性のタイプ、その他諸々…全てを聞き出す勢いで話しかけた。怪異としての本能だろうか。通常は人間に向けられる｢執着｣が怪異のAに向けられていた。

本能は留まることは知らないというように偶然を装いながら後をつけ、毎日の行動パターンの把握は怠らないようにした。人間で言う赤い糸を手繰り寄せてるような感覚にいつの間にか溺れていた。

もっと欲しい。本当は今すぐにでも捕まえたい。手中に収めたい。俺の手で腕で閉じ込めてしまいたい。この身長差で全てを覆って隠したい。この欲が留まることを知らなかった。自分の奥からドロドロと黒いモノが流れ出す。